19人が本棚に入れています
本棚に追加
25
どうして、あのこは死んで、自分は生きているんだろう。
この地上は地獄なんだ。
僕、私は地獄に産まれた。
この世が地獄なら、地上にいる人間はなんだろう。
悪魔?
鬼?
どっちにしろ化け物。
死んだ後も地獄はあるらしい。
生き地獄。
死に地獄。
何もなくとも人は死んでいく、殺されていく。
それを毎日、私は聞き流し、横目に見ている。
それがあるから、自分が幸せだという自覚を得られる。
見知らぬ誰かが殺されて、死んでしまって、心のそこから悲しめる人がいるなら、会ってみたいな。
今朝食べた食事を覚えているか?
なら、昨日自分が口にした命の数を覚えているか?
一昨日自分が口にした死骸の数を覚えているか?
ほら、思い出せない。
外に出て、スーパー、コンビニを見てみろ。
死骸がそこらじゅうに並んでいる。どうして皆、なにも感じないのか。恐ろしい。
毎日、命の喰い合いをする化け物まみれの星。
みんな化け物。化け物。化け物。化け物。
だから、その程度。その程度だ。
私は最愛の少年を失った人間だ。
とてもとても、可愛そうな、人間だ。
しかし、私は少年を上手には愛せなかった。
少年は私を愛してはいなかった。
少年が愛していたのは、狂い死んだ自分自身を見て安堵する人々だった。
僕は、私は、そんな人間たちが嫌いだ。
最愛の少年が愛した人間たち、一人残らず死ねばいいのに。
僕は悲しい。
少年を失った悲しみを超える悲しみがあるのだろうか。
夜。とあるアパートの一室のベランダに1人の男性が座り込んでいた。彼の目には手すり越しにオレンジ色の淡い光が見え、そこから煙が舞い上がっているのが見える。
先程、遠くから消防車のサイレンが聞こえた。
昨日と同じ音だ。
明日も、明後日も、同じ音がどこかで鳴り響くのだろう。
永遠に、永遠に、鳴り響け。
名も知らない小鳥のさえずりのように、聴き流してやろう。
最初のコメントを投稿しよう!