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夕方。 自宅とは反対に繁華街の方に向かっていく叶多。 繁華街にはショッピング施設が併設された駅がある。 叶多はその中に入ると、その施設の最上階の、学習スペースに入る。すでに叶多の学校を含めた何名かの学生がついたてで区切られた机に座り勉強をしていた。叶多も適当に席を決め、座ると、カバンから教科書を取り出し、机に広げる。 叶多は左腕につけていた時計に目を向けた。 7時40分。 ここにやってきてから3時間ほど経った。 叶多は机に広げていたノートと教科書をカバンにしまう。上の学生服だけを脱いでカバンに入れ、施設から出る。 叶多は、暗くなった外の中、活気づく夜の街に向かう。 街の明かりでキラキラ光るドレスを着た女性の横を通り過ぎた。 スーツを着た男性集団の横を通り過ぎた。 叶多は道を曲がった。 奥にポツリと佇む街頭だけが道標の、一面黒の静かな道、叶多はその道と繁華街をつなぐ曲がり角に寄りかかった。 誰かを待っているというふうに、叶多は縦往する人を目で追った。 叶多は腕時計を見る。 時計は7時59分、8時。 叶多は顔を上げて、目の前の道路の左右を見るが、目当ての物が無かったのかまた下を俯いて壁に寄りかかる。 しばらく叶多がそうしていると、一台の車が叶多の前に止まる。 顔を上げた叶多。車の中を除く。助手席向こうの運転席から、美術の先生が叶多に向かって手を振っていた。 叶多は助手席側のドアを開き、座る。 「ごめん、遅くなっちゃって」 昼間の授業よりもフランクに話す先生。 叶多はシートベルトを締める。 「道が混んでてさ。時間は大丈夫?」 「うん」 「そっか」と先生はバックミラーで後ろを確認し、車のハンドルを動かす。 5階建てのマンションの駐車場に先生は車を止める。 叶多と先生は車から降りていく。  202号室の前で止まり、先生は着ていた服のポケットから鍵を取り出しドアを開ける。先に入った先生はドアを片手で支え「さあ、入って」と、その通りに叶多は中に入る。 「今日は何を食べようか」 ソファとテレビが置かれたリビングに入った二人。先生はキッチンに向かい、冷蔵庫を開け、中を覗く。 「ああ、いけない。野菜、買ってくればよかった」 しまったというふうに先生は言う。 叶多はソファの上に背負っていたカバンを下ろす。 「叶多、お腹は空いている?」 冷蔵庫を閉じて、キッチンの戸棚を開いて中を見る先生。戸棚の中にはレトルト食品類がある。 「うん」 叶多は別に興味のなさそうな返事をする。 「じゃあ、多めに何か作ろうか」 ご機嫌を取るように困った笑いをしながら先生は言う。 「うん」 叶多は同じように返事を返す。 先生は戸棚を閉じ、叶多の方を見る。 叶多の座るソファに近づく。 「叶多、座りなよ」 促すように先生は叶多の背中に手を当てる。 叶多は座る。先生はその横に座る。 先生は体の内に抱き込めるように叶多を両腕で抱きしめる。 ちょうど顔が先生の首元にうずくまる形になってしまったから、叶多は水面から出るように顔を上げる。 先生は頬ずりをする。叶多の髪がくしゃくしゃと盛りあがる。 先生は叶多の顔を除きこもうとして顎を引く。 両手で叶多の顔を持ち上げる。 目の下まで伸びた叶多の髪の毛をかき分けと、伸びた髪で見えなかった額の痣が現れた。 「叶多、またひどくやられたね」 先生は愛おしそうに見つめる。 「今日は何をされたんだ?」 懇願するように先生は言う。 「今日も原くんと丹治くんが殴ってきたよ。ライターを忘れたから今日はやけどしなかったんだ」と叶多は言う。 「ああ、そうか、」 先生は叶多の頭を撫でる。 「おばあさんの容態はどうなんだ?」 「変わらないよ。杖で殴ってくるんだ」 「ああ!かわいそうに!」 先生は叶多を思い切り抱きしめる。 「おばあちゃんは病気だから」 「そんなの関係あるもんか、どうして君みたいな優しい子がこんな目に合わなければならないんだ」 まるで舞台俳優のように先生は言う。 「ぼくが悪いからだよ。お父さんがそう言うんだ」 「違うよ叶多」 先生は叶多の頬にキスをする。 「後で、手当しような。俺が治してやるからな」 先生は叶多の額の痣を舌でなめる。 「いいよ、先生、何もしなくていいよ」 先生はいまにも泣き出しそうな顔になると叶多にキスをする。 叶多が口を開けると、先生は自分の舌を押し入れる。 先生は叶多の服を脱がし、彼の肛門から挿入すると射精しようと体をうねらせながら、「叶多、お前は可愛そうなんだ。可愛そうなやつなんだよ。でも大丈夫だ、俺がいるから大丈夫だぞ。先生がいるから、叶多の味方だからな…」と、同じような言葉を言い続けた。
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