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「あとはお若いおふたりで」というどこかで聞いたようなセリフとともに、ゲンキくんと晴美さんは退けていった。
整形外科診察室に残されたのは浴衣姿の俺と、同じく浴衣姿の香織さん。俺がゲンキくんに着付けを手伝ってもらっていたのと同様に、香織さんも晴美さんに着付けをしてもらっていたのだ。
何か言わないといけないと思いつつ、あまりにも美しい香織さんを目の前にして何も言えない俺。
「香織さん……」
「真也くん、かっこいいね」
頬を赤らめてそう言う香織さんが愛おし過ぎて、美し過ぎて……。
「か、香織さんだって、きれいで……」
ここで言わないとだめだと直感した。左手に握ったままだったスマホで思わず時間を確認したが、まだまだ余裕があった。だったらなおさら。
「香織さん。写真館で撮らせてくれないか?」
「はい」
かすかに微笑んだあと視線を伏せる香織さんを見つめていたのは、すっかり仕事モードになった俺だった。
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