魔境の少女

1/2
前へ
/157ページ
次へ

魔境の少女

 とある大陸の北の外れにある一帯。濃い瘴気が漂う地域は、強力な悪魔や魔物が闊歩し、来る人を拒み続けている。いつしかその地帯は“魔境”と呼ばれ、まだ見ぬ地を目指す冒険者たちにとって、魔境を踏破する事は夢となっていた。  だが、現実は厳しく、多くの冒険者が魔境で果てていった。  わずかな生還者からの話によれば、魔境やその近隣に生息する魔物が強すぎる上に、魔境に到達するまで街や村はおろか、人が生活している痕跡すら無い。つまり、長期に及ぶ野宿で消耗してしまい探索どころではないらしいのだ。  そんな魔境の入口に当たる場所に、真新しい一軒の宿屋が建っている。その建物の外には、建物を見るように二人の少女が立っている。 「いよいよ開店だね、アサーナちゃん」 「そうね、ミリナ」  建物を眺めながら、二人の少女は言い合う。  アサーナという少女は、赤みの濃い髪色のボブカットに握りやすそうな黒い角を二本生やしている。チューブトップにショートパンツ、ガーターにニーハイブーツという格好で、すべてが黒色。  ミリナという少女の方は、かなり白みの強いセミロングの金髪にアサーナと同じような角。肩の出た長袖ロング丈の薄ピンクのワンピースに、少しかかとの高いガーリーシューズを履いている。 「ここが、魔境にやって来る冒険者たちの拠点になるのかな」 「そうなるように頑張るだけよ」  どう見ても、悪魔の少女ではあるが、冒険者相手の店を建てたようである。  二人の少女の顔は、輝きを持ってまっすぐ前を見ている。  こうして、魔境に新たなお店が開かれたのである。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加