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全く思い寄らない後藤は、自分の目と同じ高さに下りてきたエドの金色の前髪へと指先を伸ばしそっと触れた。
見た目通りの柔らかさだった。
自分では優しいと思える声音をせいぜい作り、言う。
線は細いながらも、ソッチ方面の強面だと言われればそう言えなくもないと我ながら思うので、今さら怒る気にもなれない。
「――別に変なことじゃねぇよ。顔を上げろよ」
「・・・・・・」
エドからの返事はない。
後藤はほんの小さくだがため息を吐いた。
なおもうつむいたままでいるエドへと、さらに優しいと自らは思う声で言い直す。
「なぁ、頼むから顔を上げてくれ。今夜の主役はおまえさんなんだから」
「直さん・・・・・・」
後藤にそうまで言わさせてしまっては、さすがにエドも折れざるを得ない。
後藤の頼みを聞き入れ、上げたエドの顔は真っ赤っかだった。
未だ一合の酒も飲んでいないので、急に酔いが回ったわけではないだろう。
あぁ、照れているのだ。
二十代も半ばになった大の大人の男が、まるっきり子供の様に――。
そう思うと、後藤までもが何やら気恥ずかしくなった。
自分にもその赤さが伝染ってしまいそうで、とっさにエドの顔から目を背ける。
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