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予想外の、しかし期待以上の後藤の申し出にエドはすぐさま食いついてきた。
「はい!」
きっぱりはっきりと返事をする。
今度は後藤の指先ではなく、笑みを刻む薄い唇へと自分のを押し付けた。
返事の『念押し』のためならば、一回だけで十分なはずだった。
極めて軽くだったが、エドは二度三度と口付けを繰り返す・・・・・・
何回目か数える根気など最初から持ち合わせていない後藤がとうとう、エドの両肩を思いっ切り突き放した。
「いい加減にしろ!いつまでたっても風呂に行けねぇだろ‼」
「あ・・・・・・すみません」
到底本気の域には達していないまでも後藤に怒鳴られてようやく、エドは気が付いたようだ。
――どうやら夢中でしていたらしい。
ぼんやりと謝るエドを後藤はしげしげと眺める。
黄色い毛に覆われた耳と長い尻尾とがしょんぼり垂れ下がっている幻が見えるかのようだった。
いや、確かに見えた。
心底、感じ入ったしみじみとした声が後藤の唇からこぼれ出てくる。
「エド、おまえってヤツは本当に・・・・・・」
「本当に、何ですか」
続く自分の言葉を、二の句を実にお行儀良く待ち続けるエドの姿に後藤は気圧された。
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