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エドは微笑んでさらりと応えた。
それは全くの謙遜だ。と後藤は思ったが口には出さなかった。
日本人よりも日本人らしいな。と思い又また改める。
ただ、エドワード・ハリストンという若者が謙虚なだけだ。
そしてそれはとても得難く、とても素晴らしいことでもある・・・・・・
うれしくなった後藤がエドへと一升瓶を傾ける。
それを受けながらエドはポツリとつぶやいた。
「まるで直さんみたいです」
「は?」
後藤は本気で聞き返した。
エドの青い、――そう、まるで海の様な目に映し出されている自分を見る。
ぼんやりとした、実に間の抜けた顔をしていた。
「酒造りの時に皆の中心に居るのにけして偉そうでなくて、でも、しっかりと皆のことを導いていってくれる」
「――随分と持ち上げてくれたものだな」
口では何でもないことの様に装い言いながらも、うるさいほどの自分の鼓動の音を後藤は聞く。
こんなに文字通り『胸が高鳴った』のは、一体何時以来のことだろうか。
とっさに思い出せないくらい、昔むかしの話なのは確かだった。
「本当にそう思います」
「・・・・・・」
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