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エドは先ほどの様に「変なことを言いました!」とすぐさま平謝りなど、しない。
だから、正真正銘本当に本心からなのだろう。
「直さんは、私の心の真ん中に在る星です」
そう言い切るエドの声が、自分の鼓動音をはるかに上回る大音声の様に後藤の耳には聞こえる。
いくら酒を飲んでもけして赤くなることがない顔に血が、熱が集まるのを後藤は感じた。
それはエドの青い目にも明らかだったに違いないが、何も言ってこない。
ただ、静かにじいっと後藤を見つめている。
海の上にあって、けして動かぬ揺るがぬ星をひたすら頼りに旅をする船乗りの真摯さそのままだった。
酒へと逃げるのは自分がエドよりも年を取り過ぎているからなのか。
――それとも、元々エドよりも意思が心が弱いからなのか。
分からないままに、後藤は杯を干した。
未だ手付かずのエドへと目で促す。
ほとんど反射的にエドは杯を手にし、傾けた。
続けざまに後藤が注ぐ。
この程度の酒量でエドが酔っ払うことはない。
泥酔はおろか、ほろ酔いになった姿すら見たこともない。
酒造りの約四ヶ月間、事あるごとに開かれていた飲み会で確認済みだった。
「・・・・・・じゃあ、次の仕込みも手伝ってくれよ」
「え?」
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