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後藤はエドに二の句を継がせる前に続ける。
「又、来年も手伝いに来てくれ。俺は後藤酒造で動かずブレずに変わらず酒を作っているから」
「直さん・・・・・・」
「――まぁ、来年とは言わず何時でもいいけどな!」
赤い顔のままで後藤は言い切った。
そして、手放しで笑う。
ちょうど自分と半分の年齢の男にしてやられた。
すっかり持っていかれた――。
こんなにもうれしく清々しい気持ちで『負けを認める』を認めることは、今の今まで一度もなかった。
人生は、最後の最後まで何が起こるか分からないのを改めて思い知る。
「直さんか・・・・・・」
つぶやいてみると、まるで『素直さん』とでも呼ばれているかの様でどうにもくすぐったい。
「いい加減、素直になれ!」とエドではない、もっと上に居る他の誰か、――それこそ心星が在る天にでも言われている気がした。
あぁ、そう言えば今年、知天命だったな。
まるっきり他人事の様に思い出した途端、後藤は自分でも驚くほど『素直』に口に、言葉にすることが出来た。
「おまえさんになら、そう呼ばれるのも悪くない、いや――、いいもんだな。エド」
「直さん‼」
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