「シリウス」

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 後藤はエドの肩甲骨に当てていた手のひらをさらに上へと伸ばした。 烈しい光源のその下の、頬へと触れた。 赤みはまるでないが、じんわりとした熱が張りのある肌を介して伝わってくる。  手首が取られる。  特に細くも華奢でもないと後藤自身は思っていたが、エドの手にはそうではないようだ。 五本の指で包み込むかの様にそおっと加減して握りしめられるのが、後藤にも分かる。 「ずっと酔いが醒めないままです。直さんと初めて会ったその瞬間(とき)からずっとずっと――」  言い終えると、エドは目を閉じた。 再びすぐに開いた時には強い光は跡形もなく消えていた。 静かな、穏やかな海が舞い戻って来ていた。 「エド・・・・・・」  エド以外の()がほざいたのならば「歯が浮く様な、気障ったらしいこと言いやがって!」と、一笑に付していただろうと後藤は思う。 それで、そこで終わりだ。  後藤は自分に向かって言われていると確かに分かっているのに、全く他人事の様にエドの言葉を聞いていた。  あぁ、これは正真正銘、紛れもなく『愛の告白』だ――。  エドが後藤の手首を離した。 その代わりに手の甲を、手そのものをすっぽりと覆い尽くしてしまう。 「実は、私はもうすぐイギリスへと行かないといけません」 「えっ?」
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