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言い足された言葉の力の、思いの強さに後藤はとっさに返す言葉が思いつかなかった。
適当に、うやむやな返答をしてはいけないことだけは辛うじて分かる。
「出来ることならば、ずっと直さんのそばにいたい」
さらに低くなったエドの声はほとんどささやくかの様だった。
それにもかかわらず、後藤の耳には大きく聞こえた。
「・・・・・・」
もうこれ以上、沈黙へと逃げ込んではいられないと、後藤はいよいよ腹をくくった。
先ず何よりもエドのためだったが、自分のためでもあった。
あと何年生きられるか分からないが、この年になっての後悔は多分、この先ずっと忘れることが出来ない――。
後藤がエドに握られていた手を振り払う。
それは呆気ない程、簡単に解けた。
「親御さんとの約束はきちんと果たせ。そのための約束だろうが」
「はい、分かっています。でも――」
食い下がり、なおも言い募ろうとするエドから後藤はするりと離れた。
『ローテーブル』というよりは『ちゃぶ台』と称した方が相応しいだろう座卓の前に、ドカッとあぐらをかく。
「立ち話も何だ。おまえも座れ」
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