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エドを見上げ、促した。
ほとんど『命令』だった。
「・・・・・・はい」
返事をする間はやや空いたが、渋しぶ、不承ぶしょうといった感じを一切態度に出さないエドはあっぱれと言おうか。
エドが自分の真向かいに座るや否や、後藤は卓上に置いた四合瓶を傾けた。
手酌で杯を満たし、干す一連の動作をエドは黙って見つめる。
酒を飲む後藤の仕種はさすが板についている。
まるで流れる様に滑らかで、ほんの少しの淀みもない。
瞬く間に空にした杯を、後藤はエドへと差し出した。
「・・・・・・」
後藤と全く同じく黙って、エドは杯を受け取った。
その手が微かに震えている。
後藤がエドへと行なったのは『返杯』の片道、一方通行版といったところかか。
本来は注がれた酒を飲んだ後に、その杯を相手へと返すことを指した。
エドは、先ほど居酒屋にて後藤に言われた『固めの杯』が、今のこれだと確かに思った。
寸胴な杯を、それに注がれた酒を覗き込む。
色は無色透明。
白地に青で底に沈む二重の円がくっきりはっきりと見て取れた。
『蛇の目』と呼ばれるその模様が酒の色合いを測るために描かれていることを、エドは知っている。
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