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全く私的に、ただ愉しむためだけに酒を飲んでいる後藤の姿はとても寛いでいて、――ひどく無防備だった。
「心惹かれる」と言えば実にきれいだが、もっとあからさまに言えばそそられていた。
欲情すら、していた。
じいっと見たくても、出来るだけ見ないようにと心がけていた後藤の笑顔が今、目の前にある。
自分だけを見て、自分だけに笑いかけている――。
後藤が『雨夜の星』の四合瓶を示した。
その純米吟醸酒の名前は確か、「きわめて稀にしか見られないこと」の意味だった・・・・・・
「もっと飲むか」
「はい」
後藤の、「きわめて稀にしか見られない」その笑顔をもっと見ていたくてエドはそう言ったのにもかかわらず、再び口付けられてすっかり見られなくなった。
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