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 叫んだエドの両手が後藤の顔をすっかり抱え込む。 あごの付け根が痛くなるくらいの勢いだった。 必要以上の力が加わり、後藤が特に嚙みしめていなくても奥歯がギリッと音を立てた。 「でも――、でも、直さんが今の年になっていなかったら、出会えてなかった!」 「・・・・・・」  何時もと同じように気安く『エド』と、名前を呼びたかったが後藤には出来ない。 エドの手の力が強いからではなかった。 青く白く光る両の目にすっかり射抜かれて、声が全く出せない。 「今こうして一緒にいられなかったし、過ごせてもいなかった!」 「・・・・・・」  大声で自分へと言い募るエドの目の光の色に後藤は確かに見覚えのあった。 しかし、それがどこで観た何のであるかはハッキリと思い出せない。 分からないままにただ、眺めていた。  見蕩(みと)れていた――。  エドの両の手指が後藤の頬の上をさまよう。 目の光は全くそのままで、声だけはほとんど吐息のか細さでエドが言った。 「今の直さんが好きなんです」 「エド・・・・・・」    
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