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当初は思いっ切りエドの見た目に引きずられていた後藤だったが、すぐに己の料簡の狭さを恥じた。
『心は日本人』などという、実に陳腐で安っぽいな言い回しを用いるまでもなかった。
文字通り、『偏見』という名の鱗が目から落ちた思いだった。
『偏見』と言えば、コレもそうか――。
後藤が真向かいのエドを見ると、日本人の若者の間でもそう見られない様な実にきれいな箸遣いで半分に切った油揚げを摘まんでいた。
表面に薄く塗った醤油がいい色にこんがりと焦げている。
エドがかじったところからは中身の、大葉の緑にとろけるチーズの黄色、――そして納豆の茶色が覗いた。
二度、三度と閉じた口を上下に動かした後、エドは言い放つ。
興奮のためにか、目の青さがさらに鮮やかさを増す。
「とても美味しいです‼直さん!こんな納豆の料理もあるんですね!」
「こうすると食べやすいし、酒の肴にもなるんだよ」
後藤が注文したのは納豆の袋焼きだった。
チーズと納豆とは同じ発酵食品同士故に、相性もいい。
味と香りとが繊細な純米大吟醸よりは、今飲んでいるすっきり辛口の本醸造に合うと後藤は個人的に思う。
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