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エドが先んじて言う。
「人と人との約束事を確固たるものにするために、お互いに取り交わす杯のことですよね」
「・・・・・・おう。物知りだな」
注がれた酒には口をつけずに、エドは後藤を青い目で真っすぐと見つめてくる。
「有名なのは夫婦となる際の『三々九度の杯』ですが、確か主従、師弟関係などを結ぶ際にも行なわれるんですよね」
「――まぁ、そうだな」
実は、後藤が思い浮かんでいたのはズバリヤクザや暴力団、イマドキは『反社会的勢力』と呼ばれる面々が行なう儀式だった。
親分子分ならば主従関係の一種だろうと解釈し、うなずいた。
そんな後藤の考えは全く知らないだろうエドは、きっぱりと告げてきた。
「直さんとならば、固めの杯を交わしたいです」
「は?」
後藤が思わず一音だけを発すると、一転、後藤から目を視線を逸らした。
瞬時に後藤の表情、感情の変化を読み取ったかの様な素早さだった。
「いや、その――、変なことを言いました!すみません‼」
「・・・・・・」
卓に額がつかんばかりに深々と頭を下げるエドへと何と声をかけたらよいものか。
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