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 ふと見れば、エドの大きめな唇は艶やかに濡れ輝いていた。 未だに透明な酒の膜が薄っすらと張られたままだ。  後藤は人差し指の腹でそれを拭い取ろうとする。 しかし、果たせなかった。 エドがその前に後藤の指先へと食いつき、吸い上げた。 「おい――、おれの指はかじるなよ」  犬用のおやつ(ジャーキー)じゃあるまいし。と、またもや心の中だけで後藤は言い足す。  笑いをにじませて注意をする後藤への、返事のつもりなのだろうか。 エドは青い目に後藤を映したままで、放した指の先をペロっと舐めた。 まるで、後藤の考えていることを読んでいるかの様な仕種だった。  第一関節まで咥えられていた、つい先ほどよりもよほどくすぐったい。  後藤は今度こそ大声を上げて笑い出した。 ひとしきり笑った後で、エドの頭を両手でガッシリと抱える。 後藤に「エスキモーキスをされる!」と期待で身構えていたエドの鼻先に、自分のが触れるか触れないかの近さまで寄せていった。 ギリギリくっ付けないで、後藤はエドへと持ちかけた。 「ウチの風呂なら平気だな。一緒に入るか」  エドが大きく見開いた目で二度、三度とまばたきをする。 全く声に出していなくても、「え?」という一音が後藤の耳には確かに聞こえた。
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