チャーリーと後ろの眼

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 と、いうのも当然理由がある。僕と妻が現在住んでいるマンションは、オートロックのちょっと高いところなのだ。ポストは、住人が開けて取りだすところと、配達員がつっこむところが別々になっている(安いマンションだと同じ場所になっていることもあるが、ここはそうではないのだ)。  さらに、高い管理費とローンを払っているだけのことはあって、二十四時間管理人が常駐しているのだ。当然、常に全ての出入り口をカメラで見張っている。  そもそもオートロックなので住民側のポストは、鍵を持った住民しか近寄れない。配達員側のポストルームも、管理人に呼びかけて許可を貰わないと入れない仕組みになっているはずだ。そして管理人が許可を出す業者は決まっている。郵便局の配達員か、もしくは“健全な”広告チラシを入れる業者くらいなものだ。  その仕組みのおかげか、このマンションに越してからの一年間、前の住居では嫌というほどねじ込まれていたピンクチラシの類を見ないで済んでいた。そういうものを入れる業者は、そもそもポストルームに入れて貰えないのだから当然である。  まあ、何が言いたいかというと。個人でポストに手紙を入れたいんですー、なんて頼んだところで、管理人が入室を許すはずがないのである。 「方法はあるよ」  胡桃の表情は硬い。 「それこそ、ポスティングスタッフとして、どっかの会社に雇われればいいんだから。あ、あれって業務委託のケースもあるんだっけ?……なんにせよ、どこぞの不動産会社とか、パチンコ会社とか、工事の会社とか。そのへんのポスティングスタッフのアルバイトをすれば、広告入れるのと一緒に我が家のポストに葉書の一枚くらい入れられるんじゃないかな」 「そ、そりゃそうかもしれないけど。でも、それってものすごい手間かかってるってことなんじゃ」 「だからヤバイって言ってんの。それだけの手間かけて、この一枚を送りつけてきた可能性があるんだから」  彼女の深刻そうな表情は、それが理由だったと言うことらしい。  誰か心当たりはないの、と言われたが。僕にはてんで思い当たる相手などいなかった。そもそも、僕にどうしても伝えたい言葉があるのなら、メッセージがイラストと“あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。”だけではあまりにも不十分ではないか。  そもそも。何故差出人の名前も書かないのか。 「……そういえば」  ここで、気づいたことがある。
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