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駆け落ちしたってホントですか〜前日譚〜
榊春斗と樋口二千翔。
出会いは17歳の春。当時の会社の同僚との飲み会でだった。
友人との三人、四人で色んなところへドライブをかねて行った。友人は免許を持っている年齢であった。
よく行ったのは宮城県にある、仙台港から近くの荒浜であった。荒浜小学校を過ぎ細い道を進むと右側に自販機が並んでいて、昼間ならばバスが何台も停まるであろうところにでる。
目の前の雑木林に囲まれている通路の先に海がある。だが車は入れない。左に曲がり少し行くと駐車場がある。荒浜海水浴場駐車場。車、確か黒いシビックを停める。四人で花火セットとバケツを持って通路のところに歩いていく。
通路の両脇に雑木林がある。
四人で通路を進むとコンクリートから砂に変わる。防壁の階段をあがり、目の前に海が広がる。下に降りれば砂浜だ、そして海。
四人で笑い、語り、花火で夏の夜を照らす。男二人、女二人。若かりし夏の日。
煙草を吸いながら私は二千翔に話しかける、二千翔は笑顔で答える。
程なく私と二千翔の交際は始まった。
いつも夜、時にはラブホテルに泊まり翌朝の昼過ぎの帰宅。
二日間連泊も多々あった。根本がここにあったのだ。二千翔の父親からは会う事さえ許されなかった。こそこそ会う日々。
そして、二千翔の父親は爆発した。少しずつ溜めて溜めて溜めていたものが一気に吹き出した。ほとばしる怒りは二千翔に向けられ、そこから榊家に飛び火した。
会うのは厳禁。
当時の私はそんな人間だったのだろう。
そして私と二千翔は山形市を何の計画も立てず逃避行を行動に起こした。
前日の夜、草むらや木々のある場所を隠れるように進んで大通りからタクシーで駅につき乗り込める鈍行に乗り込んだ。
山形市から離れていく。仙台から郡山市へ
そして私と二千翔の駆け落ちの第一歩がはじまった。
郡山市に降り立つ。
これから即入寮可の日払い有りの仕事を···
アーケードを歩き探す。
こうして郡山市での生活がはじまった。
❰完❱
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