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「ブレンドですね。かしこまりました」
店長と呼ばれるその女性は、俺と目が合うと一瞬ふわりと優しく微笑んだ。
そして、ネルドリップで丁寧にコーヒーを淹れていく。
コーヒーを淹れる手が、綺麗だと思った。
一瞬見せた笑顔が、綺麗だと思った。
その落ち着きのある声が、綺麗だと思った。
他人の動作に目を奪われたことなど、初めての経験だった。
「お待たせ致しました。ブレンドです」
彼女が淹れたコーヒーが、目の前に差し出された。
俺はなぜか若干の緊張を感じながら、そのコーヒーに手を伸ばし口に含んだ。
「……美味しい」
「ですよね?店長が淹れるコーヒーは、うちの看板メニューですから!ね、店長」
俺のオーダーを受けた女性店員がどこからか現れ、しきりにカウンター内にいる店長の女性に話しかける。
女性は少し照れくさそうに笑いながら、俺に声を掛けた。
「ごゆっくりどうぞ」
そしてまた、別の客のコーヒーを淹れ始める。
その姿は、いつまでも見ていられるくらい、美しかった。
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