一度失敗した女

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一度失敗した女

年が明け、新年が始まった。 一月。 また気持ちを新たに、今年も前向きに生きていこう。 そう思っているのに、テレビでやる新年の占いでまぁまぁ悪い順位だとすぐに落ち込んでしまう。 今年こそは、何か良いことがあると信じたいのに。 「店長って、意外と占いとか気にするんですね」 「真衣ちゃんは気にならないの?」 「真衣は全然。占いなんて信じたことないです」 カフェの営業時間前。 お店を開ける準備をしながら、スタッフの子と話す時間が私は好きだ。 北海道札幌市の地下鉄大通駅から徒歩三分。 本通から一本裏道に入ったところに私が店長として働くカフェがある。 『CAFÉ MOON』はオープンして今年で十年目。 その間本当にいろいろあったけれど、この仕事を辞めようと思ったことは一度もない。 ここは、自宅以外の自分の居場所。 職場をそんな風に思える私は、きっと幸せなのだろう。 葉月彩芽36歳。 店の定休日も豆の焙煎があるため、ほぼ毎日このカフェでほとんどの時間を過ごしている。 この仕事をしていなければ、今頃私はどうなっていたのだろうと、たまに思う。
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