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「真衣ちゃん、占い好きそうに見えるのにね」
「それ、超偏見ですよぉ。ていうか、店長こそ占いなんて興味なさそうに見えるのに」
彼女は藤倉真衣27歳。
見た目はいわゆる小悪魔系女子で、私生活は結構派手に遊んでいるように見えるけれど、仕事に対しては手を抜かずいつも熱心に取り組んでいる。
このカフェの正社員は、私と彼女だけ。
他のスタッフは学生も多く、皆バイトだ。
「そういえば、今日も来ますかね。あのイケメン」
「イケメン?」
「ほら、いつもカウンターの席に座るイケメンのことですよ」
「あぁ、あの人……」
彼女が言うイケメンとは、一ヶ月くらい前からうちのカフェの常連になってくれたお客様のことだ。
バイトの子たちは密かに彼のことを「王子」と呼んでいるらしい。
「顔立ち完璧だと思いません?性格はちょっと冷たそうだけど、それもまた良いっていうか」
「そうね。確かに、カッコいいよね」
皆が騒ぐのもわかる。
自分があと10歳若ければ、真衣ちゃんのようなテンションで盛り上がっていたかもしれない。
でも、今の私にそんな気力はない。
「多分、年齢は私と同じくらいだと思うんですよね」
「そうかもしれないね」
「店長、もし今日彼が来たら年齢とか聞いてみて下さいよ」
「もう……年齢なんて聞けるわけないでしょ」
基本、お客様のプライベートな部分に土足で踏み込むようなことはしない。
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