はじまりの巫女アイシア

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 昔々、まだ実と虚が分かれて二百億年も経たぬはじまりの時代、三つの星領(せいりょう)が万物の根源論について争い、戦争を繰り返しておりました。  科学をその(いしずえ)とするマン族、魔法を宇宙の(ことわり)とするヴィズ族、超能力こそ力の(みなもと)とするイデア族。それぞれ異なる信仰、文明のもと、進化を遂げてきた種族です。  辺境の星林(せいりん)にあるマダラの寺院に各星領の代表者が集められました。最狂の科学者アトモス、最恐の魔導士ロゴス、最強の超能力者アペルの三人です。  石灰岩で築かれた寺院は、樹齢一万年を超える樹木に囲まれ、(つた)が壁に絡みつく古びた(たたず)まいでした。  マダラの上空から灰色の戦艦と、黒い帆船(はんせん)と、銀色の気球船が舞い降りると、木々をバキバキとへし折りながら、寺院の近くに着陸しました。  それぞれの船から代表者が降り立つと、一人の老人が待ち構えておりました。 「わざわざお越しいただき、かたじけない。お集りいただいたのは、ひとつ相談がございまして、皆様の力をお借りできないかと思いました。まずは……境内(けいだい)へお入りください」  年老いた高僧テロスは杖を突きながら門をくぐると、三人を境内へと案内します。  寺院の回廊は柔らかな日に照らされ、竹柵には小鳥が羽根を休めており、涼やかさえずりを奏でていました。
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