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* * *
「お帰りなさいませ。ご主人様」
ゆっくりと目を開けた。天井が見えた。
体が動かない。
硬直しているような、痺れているような感覚。
「無理に動いてはいけません。すぐに元通りになります」
瞳だけ動かしてベッド脇を見る。女はパイプ椅子に座り、タブレット端末を操作していた。
端末にはケーブルが繋がれており、その先は俺の額へ繋がっていた。吸盤か何かで貼り付ているみたいだ。
「外しますね」
そういうと、女は荒々しくケーブルを引き剥がした。
「いてっ!」
思わず声が出て、起き上がった。体が動くようだった。
「ご満足、いただけましたでしょうか?」
可愛らしい声で首をかしげて、俺の目を見つめた。
満足……そうだ。おれは和真に会った。彼が亡くなった当日に。
結局、助けられなかった。でも……暴言は訂正できたし、彼の真意が分かった。
そのことが、俺の心を少し安らかにしていた。
でも、待て。
あれは本当に起こったことなのか?
事実なら、タイムトラベルをしたことになる。
そんな技術が開発されたなんて聞いたことがない。
「確かに、あの日に戻れた。そして、彼とちゃんと話ができた。でもあれは、薬で幻覚を見せただけじゃないのか?」
「疑い深いですね。彼と話しをしたのは事実ですよ」
女は眉を寄せて、ムッとした表情を見せた。
「成功報酬だって言ってたよな。証拠を見せてもらわないと、料金は支払えない」
何を信じるべきか分からなくなっていた。
あれが実際に起こったことなら、10万円ごときでは足りない。
「疑い深いですね。仕方ないです。あなたの体に起きたことを説明します。あの薬は、精神をトランス状態に入れるものです。心を解放するお薬と言ってもいいでしょう」
俺は無言でうなづいた。最後まで一旦、聞こう。
「その状態じゃないと、繋ぐことができないんです」
「繋ぐ? どこに?」
「ストレートに言いましょう。あの世にです。この機械が仲介します。こちら側の会いたいという意図と、先方の会いたいという意図が合致したら接続できます」
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