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プロローグ
「もう我慢できん」筋金入りのネオ・ナチであるヴィルヘルム・シュナイダーは、端末に垂れ流されているヘッドラインニュースで堪忍袋を破裂させた。「いつまでも俺たちが黙ってると思ってたら大まちがいだぞ」
ヘッドラインニュースはNAFTAの域外関税率改定法案に、民主党のナショナリズムに凝り固まった大統領がサインした、というものであった。ドイツ人のシュナイダーたちはこれにより、ますますヨーロッパ域内の貿易に依存することになる。
それはとりもなおさず、〈強いドイツ〉の死を意味する。いまやアメリカは資金力にものを言わせてますます深く油田を採掘し始めている。中東一強の時代は終焉を迎えつつあった。石油すらパックス・アメリカーナの時代なのだ。石油が高騰すればドイツは航空機や艦船を動かせなくなり、首根っこを掴まれたも同然になる。
「俺たちネオ・ナチはあいつらをやっつける。それもいますぐにだ!」
ヴィルヘルム・シュナイダーは間髪入れずに仲間たちを招集した。誰もが祖国のためなら殺人、無差別テロ、飛行機ハイジャックまでやらかす用意のある生粋の国粋主義者どもであった。
かくしてネオ・ナチは動き出した。数週間後、彼らのプロパガンダ戦略はドイツ陸軍将校の大半を文民統制から切り離すことに成功していた。ドイツ政府が軍事クーデターにより転覆されるのは時間の問題であった。
ヴィルヘルム・シュナイダーが売国奴どもの粛清を決意してから47日後の2023年10月7日、ドイツ第四帝国が復活したのである。
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