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わたしたちの住む森は静かな場所にある。木々が生い茂り、黒に近い色の深い緑が空を覆い尽くしている。吹く風は氷のように冷たく、湿り気を帯びた土からは時々湯気が立ち上っていく。
外に出てはいけないとオトナたちに言われていて、わたしたちはそれをきちんと守っている。わたしたちには外気は身体に毒で、太陽の光は浴びると火傷してしまうと教えられている。外に出たヒトが外気と日光にさらされて、皮膚がただれ、呼吸ができなくなって死んでしまったという話は、とても恐ろしくて初めて聞いたときは眠ることができなかった。
この深い深い森の中が、わたしたちの世界の全て。それを窮屈だと思ったことは一度もない。わたしたちの森は凍てつき、新鮮な空気に溢れ、自然の恵みを受け、とても暮らしやすいところなのだ。愛するヒトたちに囲まれ、わたしたちはお互いを愛し、穏やかな日々を送っていた。
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