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例のごとく冷凍庫の中はよく見えない。
僕は手探りを交え、肉まんを探した。
しかし、肉まんは出てこない。
どれだけ探っても、肉まんは無い。
僕の心が砕けそうになった頃合いに、肉まんの代わりに眼鏡が出てきた。
……そういえば、昨日夜中に肉まんが食べたくなって、酔いに任せて貪ったんだっけ。
たぶん平らげてしまった肉まんの代わりに、眼鏡を冷凍したのだろう。
――酔っぱらいとは、そういうものだ。
酔っていたとはいえ、わけのわからない自傷行為に自分でも呆れてしまうが、色々と大事にならずに済んで良かった気はする。
なんにせよ良かった。
これですんなりとホームセンターへ行ける。
僕は胸を撫で下ろし、再び回復した視力と共に意気揚々と外出着に着替え、雪が降り積もる外界へと足を踏み出した。
例え雪が積もっていようとも、矯正視力0.8の前に敵はない。
僕はペンチを買うため、まだ真新しい未踏の白銀に足跡を付け回り、はしゃいだ。
〈了〉
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