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①
プロローグ
「……ごめんね、2人共……」
1人の少女がベッドのところに座りながら近くに飾ってある1枚の写真を手元にとって写真を見ながらとても悲しい声で誤った。
しばらく1枚の写真を見ていると少女の瞳からだんだんと涙が溢れ、もう一度、『ごめんね』と呟いて少女は近くに自分で置いておいた、小さな瓶ビンを手に取った。瓶の中には、小さい玉というより何かの薬だろうか、白い錠剤がたくさん入っていた。
少女は瓶の蓋ふたをとり、左手のひらに瓶の中身を白い錠剤を出した。
左手のひらには、通常は3粒くらいの年頃の少女が手のひらには、3粒以上のもう、何粒、瓶から出したのか分からないほどの白い錠剤が手のひらにのってあった。
少女は、手のひらにのった分の白い錠剤を一気に口に入れた。
そして始めから用意しておいた水を口の中に押し込んで、そのまま少女は静かに自分のベッドに横になり、眠り込んでしまった。
1
広い空き地に一人の少年がいた。少年は、見るから何もないただの空き地で叫びながら何かを捜していた。
「おーい、みーたん。どこにいるんだー」
少年は猫か犬らしきと思われる名前を叫びながら捜していた。空き地には子犬や子猫が出入りしそうな壁穴や穴が開いた電柱が横向きに置いてあったり、ベンチらしき物が何ヵ所もあったりする。
小さい子供が遊んだりするのには、少し寂しいが遊べなくない広さ。
けど、空き地にいる少年は、どう見ても中・高校生ぐらいの背の高さ。少年一人、何もない空き地にいたって面白みもない。
一体、この少年は何をしているのか。
「おーい、みーたん。出てこーい!」
少年はベンチや電柱の所を一生懸命捜している。
「どこにいるんだ、三毛猫のみーたんは?」
どうやら少年は猫を捜しているようだ。
「渉!」
「綾!」
少年が空き地で猫を捜していると自分を呼ぶ声が聞こえた。声がした方向を向くとこっちに向かってくる少女と老人と男の子の姿が見えた。老人がいる為にゆっくりと少年がいる所にやって来た。
「見つかった、渉?」
「全然、ダメだ」
「僕のせいだ。僕が間違ってみーたんのしっぽ、踏んじゃったからだ」
「大丈夫だよ、恭夜君。絶対、見つかるよ。その為におばあちゃんにも一緒に来てもらったんだから」
「ほんと綾お姉ちゃん?」
「うん。瑠璃さん、お願いします」
さっきまで少年が捜していた猫が物影から出てきた。空き地に1ヵ所だけ物影になる所がある。みーたんは、そこからゆっくりと現れた。
「みーたん、いらっしゃい」
「ニャー」
猫は飼い主に呼ばれて、足元まで来ると頭をこすり付けて甘えていた。
「俺が呼んでも出てこなかったのに」
「みーたんは頭がいいのよ。多分たぶん私が呼んでも現れてくれないわよ。瑠璃さんに呼ばれて始めてくるのよ。一番の飼い主さんに」
瑠璃は、猫を抱きかかえると優しく微笑んでいた。
「ありがとうね、綾ちゃんに渉君。この子、みーたんを見つけてくれて」
「いいえ」
「俺達はなにも。やっぱり飼い主さんには、かなわないです」
「恭夜君。どうしたの?」
「僕……みーたんと仲良くできるかな?」
「大丈夫だよ。優しくみーたんにごめんねと言って頭を撫でてあげれば、みーたんも分かってくれるよ」
「でも…」
「とりあえず、やってみろよ」
「うん。みーたん、ごめんね」
「ニャーン」
猫は気持ちよさそうに撫でてもらっていた。恭夜に笑顔が戻った。
「本当だ!」
「よかったね、恭夜君」
「うん。ありがとう、綾お姉ちゃん、渉お兄ちゃん!」
「じゃあ、帰ろうか」
「うん」
「本当にありがとうね。お代を払わないとね。おいくらかしら?」
「あっ、いいえ。お代はいりませんよ。私と渉はまだ、高校生なのでお金は取りません。それにまだ、未熟者ですし」
「助っ人ということで」
「でもねぇ~」
「じゃあ、アメだったら貰ってくれる?」
「そうね、アメだったら平気よね」
「「はい、ありがとうございます」」
綾と渉は恭夜からアメ玉を貰った。
「本当にありがとうね、綾ちゃんに渉君。早く見つかったし、きっとお父さんのように素敵な探偵になれるわね」
「そ、そんなことないですよ」
「父さんにはまだ追い付けないですよ。まだまだ」
「でも、きっとなれるわ」
「僕も応援する!」
「ありがとう、恭夜」
「ありがとうございます、瑠璃さん」
そう、この少年少女は探偵なのだ。
2
朝の眩しい光と共に鳥達の声が聞こえる。ここは朝倉町あさくらちょう。緑豊かと大きな河川敷があることで印象をあたえる。それと同時、いやそれ以上にご近所さん方に有名なのは、滝森探偵事務所だ。家族で経営している。家族で経営しているので、何件もの依頼は受けられないが生活していくには、困らない。
滝森探偵事務所の所長である滝森 蓮れんは、凄腕の探偵として有名といえる。
そんな彼にも2人の子供がいる。それも双子さん。けど、男女の双子は珍しいといえる。そして、幼い時から父の背中を見て育った双子はいつの間にか、自分達も父の仕事を手伝うようになっていた。
けど、所詮しょせんは子供。大人ではないのだ。まだ、未熟=高校生なので危険ではないと所長ちちが判断された依頼だけやっている。主にご近所さんが困った内容ことを解決している。
そんな滝森家の朝は、ニュースを見たり、依頼があった時には、そんな話題から朝がスタートする。
「おはよう、お母さん、お父さん」
「おはよう、綾」
「おはよう、綾。昨日はご苦労さん。鈴木さん、喜んでいたぞ」
「うん。なんとかなったけどね」
「でも、依頼は達成した。よくやった」
昨日の依頼は、ご近所さんの猫がいなくなり、それを双子で見つけるといった内容の仕事だった。それが無事完了したのだ。
「……おはよう、父さん、母さん、綾」
「やっと起きてきたわ。おはよう、渉」
「おはよう、渉」
「おはよう、渉。昨日はご苦労さん」
「なんとかなったけどね」
「あら、綾と同じ事を言っているわ。さすが双子よね。ねぇ、あなた」
「そうだな」
双子の2人は意識していないが自然と意志疎通いしそつうなところがある。
少女の名は、滝森綾。朝霧学園に通う高1。ほっそりとした体型に腰のところまである長い黒髪はストレート。
少年の方は、滝森渉。同じく高1。背が少し綾より大きい。顔立ちはどちらも同じ。ちょっとした同じ変装だったら、後ろから見たら、分からないかもしれない。一応、綾が先に生まれたので、綾が姉で渉が弟になっている。
「あら、2人共。早く学校に行かないと遅刻になるわよ」
「本当だ「「いってきます!」」
2人は家を出た。そんな2人の姿を見た両親は、
「本当にそっくりね。少しは違うところがあるけど」
「そうだな」
2人は学校に向かって歩いていた。2人が通う朝霧学園。水色のブレザーに灰色のズボンあるいは、スカートの制服を着ている。そして赤のネクタイをしている。家から真っ直ぐ歩いて40分くらい歩く。
「オッス! 滝森双子!」
「ちょっとその呼び方「やめて」「やめろ」
「おっ、さすが双子。今日も息ピッタリ!」
「まったく茂は! まぁ、そんな事よりおはよう!」
「おはよう」
「おはよう、綾ちゃん。あのさ、綾ちゃんにお願いがあるんだ。オレ、今日の数学で当たるから教えてほしいところがあるんだ」
「え~、どうしようかなぁ~」
「頼みます! この通り!」
「渉に教えてもらったら? 同じクラスでしょう?」
「いや、綾ちゃんの方が分かりやすい!」
「どうせ、俺は分かりにくいよ。悪ぅーございました!」
「怒るなよ。渉はどっちかというとスポーツは頼りにしているって」
「調子がいいんだからなぁ~茂は」
鈴木茂。渉のクラスメイトでクラスのムードメーカーである。部活はサッカー部に入っている。だから髪はスポーツ刈りで、最近ケガしたのか右の頬ほおにバンソウコが貼ってある。
そんな茂が2人に頼ってきた。今日は勉強みたいだ。
双子の姉である綾は勉強面。渉は運動系、体を動かすのが好き。でも、どちらも頭脳も運動もできる。文武両道なのだ。
「あっ、雫しずくに若菜わかな~、おはよう~」
「おはよう、あーや」
「おはよう、綾ちゃん」
綾は同じクラスメイトで友達の2人に会った。2人は学校の正門の所にいた。
先に挨拶をしてきた少女の名は、[[rb:青森雫 > あおもりしずく]]。髪を2つに結び、背がクラスでは(女子の中では)一番小さい。クラスでは、綾の次に頭がいいのだ。天文の知識はすごい。そして性格は優しい女の子だ。
もう1人は[[rb:上野若菜 > うえのわかな]]。髪をショートカットにしており、よく雫と共に行動している。性格は明るい性格。2人は天文部という部活に入っている。
ちなみに綾と渉は部活に入っていない。
「何しているんだ、こんな所で?」
渉は綾の友達と面識があるので素直に質問してみた。質問の内容を聞いた綾は思わず、渉を見て、ため息をした。
綾のため息で一瞬、渉の動きがビクッと動いた。
「渉、また……先生の話、聞いていなかったなぁ~」
「えっ、いいや~」
渉が綾から目線を外した。
「全まったく。今日は天文部で今までの研究をまとめた論文を発表する日だよね」
「そう。隣町の青葉学園で今までの研究を発表するのよ、分かったかな、渉君?」
「はい……分かりました、上野さん」
(あれ)と綾は、突然思いついたかのように渉と茂の事を見た。
「渉のクラスでも確か……天文部の星宮さんという人がいたと思うけど?」
「はい、確かにいます。すみません、すっかり担任の話、聞いておりませんでしたし、思い出しました」
「おいおい、渉……それで成績がいいんだから、ずるいよな。いや、詐欺だ!」
「別にいいだろう。授業は、ちゃんと聞いているから、俺は」
「そうですか。そういう事にしておくよ」
その場にいる全員が笑った。綾と渉が通う朝霧学園では、期末、中間といったテストがあると学年で上位60番目くらいは廊下に毎回、10位と名前が張り出される。それに毎回、綾と渉は必ず名前が張り出されているのだ。
その事を茂は考えながら渉の事を言っているのだろう。
「思い出してくれましたか? けど、渉君は面白いね。今回は私と若菜ちゃんとあとは、部長と2年の[[rb:和志 > かずし]]先輩で行くの。今は先輩を待っているの」
「頑張ってね、2人共!」
「まぁ、私も雫も先輩の手伝いだけ」
「でもいいじゃあない。貴重な体験だと思えば」
「そうだね。そう、思って頑張るよ。ありがとう、綾ちゃん」
「待たせて悪いね、雫君、若菜君!」
「「おはようございます」」
「おはよう」
「じゃあ、頑張ってね」
「ありがとう!」
綾達は天文部の先輩が来たのでその場から離れて校舎に向かって歩き出した。
「そう言えばさぁー、2人は部活入ってねぇじゃん?」
「「そうだよ」」
「あっ、ハモった」
「それで?」
「退屈しねぇ~の?」
2人は首をふった。部活に入っていない訳は言わないが2人には、やる事があるから部活には入らないのだ。
2人の主な放課後は、父の探偵の依頼の手伝いをしているからだ。誰も知らないが。
「別に。退屈はしないよね、渉」
「そうだな~」
「ふーん。でも、勿体もったいないなぁ~渉は、運動系で綾ちゃんは文科系かな。オレ的の考えだと」
「それはどうも、茂。そう言われても入らないよ。家でゆっくりしたいし」
「左様さようですか」
「あっ、時間になっちゃうよ。じゃあ、茂君は渉と同じクラスなのだから渉にちゃんと教えてもらってね。じゃあね!」
「そ、そんな~」
綾は走って先に校舎の中に入っていった。渉が綾の事を見送ってから茂の肩にポンポンと叩いた。肩を叩かれた茂が渉の事を見た。
「ドンマイ。俺が教えてやるよ。それはもう、丁寧でかつ優しく、茂でも分かりやすく!」
「……根ねに持っているだろう、渉」
「さぁ~ね」
「いや、絶対に持っている。絶対、根に持っているね、渉!」
いやいやと首を振りながら渉も茂と一緒に校舎の中に入っていった。
2人が校舎の中に入ったあとにキーン・コーン・カーン・コーンとチャイムが鳴った。
昼休みに綾は友達の春奈と外でお昼をとっていた。いつもは4人でとるのだが今日は、雫と若菜が部活で隣町まで行っているので今日は2人だ。
[[rb:藤宮春奈 > ふじみやはるな]]とは中1の時に知り合った。中1の同じクラスの時に知り合い、仲良くなったのだ。朝霧学園は中等部と高等部と一緒の学園なのだ。
春奈はショートカットで前髪を少し左に寄せて、ピン止どめでとめている少女で明るい性格で、よく友達のニックネームを考えるのが好きな子だ。部活はバスケ部だ。
お昼は自由時間なので天気がいいとよく外か、学食でお昼を取る事が多い。
この学園は、中等部と高等部と一緒だか、高等部になってからお昼でも放課後でも学食=レストランが使える。中等部の生徒は、お昼には給食が出るので放課後の部活帰りに少し、学食によってもいい事になっている。
なので、お昼は高等部の生徒だけが使えるので、中等部の生徒は早く高等部にあがりたいと思う生徒はたくさんいると思われる。
綾と渉が通っている朝霧学園は、中等部と高等部が一緒なので、ここの受験を希望する生徒が多いという。そのまま上がれるのと親達が自分達の子供が高校生になっても、お弁当を作らないでいいのが助かる、中学から高校に上がるさいの学校の受験、手続きなど手間がかからないなど、いろんな理由から助かる事で朝霧学園は人気があり、有名な学園でもある。そのぶん、受験は厳しいが。
「ねぇ、あやっぺ、今日の放課後って暇?」
「なんで?」
「実は放課後、委員会の集まりがあるのだけど今日、金沢君が休みでしょう。私、1人じゃあ心細いというか、なんというか……」
「うーん、いいわよ」
「ありがとう!」
「先生には言ったの?」
「まだ。私の方から先生には、言っておくからそこは安心して。でも、良かった~最低2人でくる事になっていたから、助かった~」
「大変ねぇ」
「まぁ~ね。……あれ?」
「どうしたの、春奈?」
「あそこ……正門からゆっくり歩いて来るのてって若菜?」
「目がいいわね、春奈。えーと……本当に? でも帰って来るの、早くない?」
「そうだね。確か今日一日は、かかるって言っていたよね。しかも若菜1人って、どう考えてもおかしくない?」
「うん」
綾と友達の春奈はゆっくりと校舎に向かって歩いている若菜の姿を見掛みかけて走った。2人が若菜の元にたどり着くと若菜は、もう限界というばかりにその場に座り込んでしまった。
「ちょっと若菜、どうしたの?」
「今日は隣町に行ったのでしょう?」
「……途中で具合が悪くなって帰って来たの」
「うそ!大丈夫?」
「とにかく保健室に行かないと」
「そうだね、あやっぺ」
2人が若菜の話を聞いて、2人で保健室に連れて行こうと話をしていたら、聞き覚えがある声が聞こえた。
「おーい綾、何やっているんだ?」
「渉?」
聞き覚えがある声の正体は渉だった。突然、後ろの方から渉の声が聞こえた。後ろを向くと渉と茂、もう1人の男子がこっちに向かって来た。
「渉! 丁度いいところに」
綾は渉達、3人を早くというばかりに手招きした。渉達、3人はなんだろうと思ったのか3人で顔を見合わせて綾の方に向かった。
綾の方に向かうとちょっと不安げに渉が答えた。
「な、なんだよ」
「お願い協力して、若菜を保健室まで連れて行って!」
「えっ?」
「具合が悪くって途中から戻って来たみたいなの。お願いします」
「お願い手伝って、渉!」
綾は渉達に声をかけた。渉達は、綾と春奈のお願いとぐったりとしている若菜の姿を見て3人は、顔を見合わせてお互いに頷いた。
「分かった。茂、友樹ともき、手伝ってくれ!」
「分かった」
「いいよ」
「春奈は先に保健室の先生に若菜の事を伝えて。私は、担任のところに行くから。渉達は、そのまま保健室に向かってくれる」
「うん」
「分かった」
綾は、渉と春奈に指示をだして、綾達はそれぞれの行動に移った。
綾と春奈は、真っ直ぐに校舎に向かって移動を始めた。渉を含む3人は、若菜に声をかけてゆっくりと動き始めた。
綾と春奈の姿が見えなくなり、ゆっくりと移動していた3人のうち茂が渉に話しかけた。
「さすが綾ちゃん」
「ほんと頼れる姉だよ」
渉達も保健室に向かってゆっくりと移動して行く。
***
放課後。綾は春奈の手伝いで委員会へ向かい、話を聞いていた。春奈の委員会は、美化委員会で春になってからの活動についての話し合いだった。今の季節は冬。春に向けての活動についての話し合いがようやく終わった。
綾は春奈と一緒に廊下を歩いていた。
「話し合いが早く終わって良かったね、春奈」
「うん。ねぇ、あやっぺ」
「うん?」
「若菜の家に今から行ってみない?」
「どこに住んでいるのか知っているの?」
「うん、知っているよ。案内するからどう、一緒に行かない?」
「……そうだね。少しくらいなら大丈夫だと思うけど行ってみる、春奈?」
「うん、心配だし行ってあげたいの」
「分かった。付き合うよ」
「ありがとう、あやっぺ」
2人は、自分達の教室に戻って鞄を持ってから若菜の家に向かう事になった。若菜の家は、学校を出て左へ向かって歩いて行くみたいだ。
綾は始めて行くが春奈は、何回も行った事があるみたいだ。
「メールした方がいいかな?」
「寝ているかもしれないよね。それにすぐ返事がくるとも限らないし……とりあえず、分からないからやめた方がいいかもよ、春奈?」
「そうだよね……あとでメールしてみるよ」
「私もあとで送ってみるよ」
綾は一度、自分の鞄から携帯電話を取り出して開いてみると画面には、メールマークがあった。綾はメールを確認してみた。差出人は渉だった。
ー仕事が入った。電球交換だけだから俺一人で大丈夫だ。以上ー
綾はメールを見て ー分かったー と返信をして携帯電話を鞄に戻した。
「ここだよ、若菜が住んでいるところ」
「若菜ってマンションに住んでいるのね」
「そうだよ。2階の一番奥だよ」
メールの返信している間に若菜の住んでいるマンションについた。
綾は少し周りを見てみるといろんなところにマンションが建っていた。もし、自分一人で来る事になっていたら完全に迷っていたと思えた。2人はさっそく、若菜のところへ行った。けど。
「ごめんなさいね。若菜、今、寝ているのよ」
「そうですか。若菜ちゃんにお大事にと、お伝え下さい」
「えぇ、ありがとう。若菜に伝えるわね」
2人は若菜に会えずに来た道を戻っていた。
「やっぱり寝ていたみたいね、若菜」
「うん。大丈夫かな、若菜?」
「あとでメールするんでしょう、春奈。その時に容態を聞いてみたら?」
「うん、そうするよ。ありがとう、あやっぺ」
2人は話しながら歩いて学校まで戻ってきた。学校に戻ってくると少し話をして2人は別れた。春奈は右の駅の方向へ、綾は真ん中に向かう。
「じゃあまた、明日」
「うん、またね」
綾は自宅に向かって歩いていた。少し寄り道したから空が暗くなってきた。冬の季節は暗くなるのが早い。そのため家までの道なりが暗く見える。
途中、電柱とかの明かりがあるがやっぱり暗い。綾は家に向かって歩き続ける。
(早く帰らないと!)
「綾!」
「渉?」
渉の声がして声が聞こえた方を見ると前から自転車に乗った渉が、こっちに向かってくる。渉は綾のところにくると自転車を降りた。
「どうしたの、渉?」
「迎えにきた」
「えっ、ありがとう~渉」
「別にいいよ。冬は暗くなるのが早いから綾一人じゃあ心配だって、母さんが言っているし。まぁ……襲われても綾なら平気だと思うけど、俺は」
「あら、酷いなぁ~渉君。まぁ、それでも迎えに来てくれたんでしょう。ありがとう、渉。家に帰ろう」
「そうだな。やっぱり冬は寒いわ」
2人は自宅に向かって歩き出した。さっき渉が言っていた『綾は襲われても大丈夫』という言葉の本当の意味は、まだ、秘密のままで。
「メール見たけど……」
「向かいの早野はやのさんの家。おじいちゃんからの依頼。おじいちゃんは家族に電球交換を頼まれていて、いざやろうとしたら、急に腰を痛めて交換できなくなったから、急きょ父さんに依頼がきた」
「そう、それで渉が早野さんの家に行く事になったのね」
「そういうこと」
「じゃあ、渉 向むきね」
「そうだな」
「あっ、そうそう。茂君、大丈夫だった?」
2人は歩きながら家に向かっていた。その時、綾が渉にあった依頼の事を詳しく聞いていた。渉一人で本当に大丈夫だったのか、一応、心配していた。
そして綾は急に今朝の事を思い出して渉に聞いてみた。
「あぁ、あれ。茂の勘違い」
「はぁ、勘違い?」
渉の答えに思わす綾も、もう一度、復唱してしまった。
「そう。指名はされたけど、ここが当たるから教えてくれって言っていた問題を教えたら、実は違くって俺が教えたのは全然、意味がなかった」
渉の話を聞いて綾はふっと笑って渉の事を見た。
「ふーん、茂君らしいわね」
「全くアイツには……ほんと困るよ」
「まぁ、今日の事は大目に見てあげれば」
「あとでなんか奢おごってもらおうかな」
「茂君、かわいそう~」
「いいんだよ、その時は綾の分まで奢ってもらうから」
「私も?」
「うん、そう。下手したら綾が教えたのだって無駄になっていたかも知れないし。今日はたまたま、時間がきて俺が教える羽目はめになったけど」
「それはそうだけど、いいのかな~私も?」
「いいんだよ。1人、増えたところで構わないだろう、どうせ」
「渉……今日はだいぶ、機嫌きげんがよろしくないみたいね」
「そうかな?」
「まぁ、本人が気にしていなければ、けれでいいけど」
「よし、明日、さっそく茂に言ってやろう!」
「はいはい。茂君、かわいそうに」
綾と渉は仲がいい。2人の事を知らなければ、2人の後ろ姿を見たら恋人同士に見えるくらいだ。でも2人は双子。
2人には、簡単な仕事をやっているがクラスメイトに秘密にしてある。言ってもしょうがない事だしと2人は分かりきっている。
2人はまだ、未熟でとても父のように探偵ですと胸張っていえるほど実力がない。けど、そこそこの実力があるというより、ついてきているといえる。
2人は学校では普通の高校生として生活をしている。
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