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 目をあけると、白い天井がみえた。ずらりと医療機器が並んでいる。  身体を動かそうとしたが、全く動かない。腹の方へ目を移すと色々な管が通されている。  「あ、木場(こば)さん」  モニタリングしていた看護師が医師を呼びに走った。  医師の説明によれば、俺はブナの根開きの写真撮影中に表層雪崩に巻き込まれて三日間生死の境をさまよっていたらしい。車のドアに手をかけたとき妙な音を聞いた記憶がよみがえった。  ではあの宿の出来事は夢だったのだろうか。  枕元に小さな包みが置かれている。 「すみません、これは」  身体が動かないので目を動かして包を示した。 「木場さん、握ってたんですよ、これ」 「俺、金持ってた? 千円札とか」  看護師は頷いた。 「貴重品なので、こちらでお預かりしています。10枚ありましたけど、不足ですか」  鼻の奥が痛くなった。 「いいや。その包、あけてみてくれる」  看護師は、はい、と素直に包を開いて怪訝な顔をした。 「どうしたの」  俺の前に差し出されたものは見覚えのある指輪だった。加恵に贈った結婚指輪だ。  窓からの日差しを受けて傷だらけの指輪がキラリと輝いた。
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