第1章~異世界からのSOS~

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第1章~異世界からのSOS~

 テナントビルのような見た目のビルを拠点とするとある組織。その組織は住み込みで構成員達が他の場所へと向かい、その場所で起こっている出来事などを解決するという物を主に行っている組織で。物語の主人公…ディナスはその組織に所属する構成員の一人である。 「おはようございますディナスさん。」 「おはようパルピア。君は今日何か仕事を受け持っていたの?」 「あ、はい。ポピルティーナがある宇宙人の一族を襲撃しようとしている、という情報が組織に入ってきたので、それを解決しに向かいます。」 「ポピルティーナ…。あの魔女、また性懲りもなく争いを起こそうとしているのか…。」  海老茶色の長髪を肩のところで二つ結びにした齢20から30代程、と見られる優し気な印象を見るものに持たせる顔の女性…パルピアと会話を交わしつつ、ディナスは執務室へと向かっていく。  デスクに向かい束となった書類と向かい合うディナス。依頼がない日はこうして書類仕事を次々とこなしていくのだ。途中、ボールペンのインクが切れたために組織で支給された替え芯と入れ替える。それから再び書類に向かい始めてからしばらくしたのち。黒いショートヘアの何処かやる気のなさそうな男性が執務室へとやってきた。 「ディナスはいつも通り勤勉だなぁ。この前緊急で入った仕事でも、その先で出会った女性と一緒に解決したんでしょ?…仕事熱心で本当感心するよ。」 「アオノス、お疲れ。君は確か今日の分の依頼を受けていたはずでしょ?…早く行きなよ。」  今まで自分が向かっていた書類から目線を外し、ディナスが黒髪ショートヘアの男性に言葉をかける。するとその男性、アオノスは…こう言葉を発した。 「緊急で入った仕事をこなした事を買って、お上さんがディナスに仕事を持ってこいと言ってきたんだ。…ホレ。」  ディナスの積み上げた書類の上にかぶせるように一枚の紙を落とすアオノス。仕事を始めた時から三分の一に減った書類の上に落とされたその紙をディナスは拾い上げ、しげしげとみる。それは、ある異世界で哲でできたような見た目の人形の軍勢が人々を襲撃し始めたので、その原因などを調査してほしい、というものだった。  少しの間紙に書かれた内容を黙読したのちにディナスがアオノスに言葉を放つ。 「金属でできたような見た目の人形ねぇ…。こういった類のモノは雷属性の呪文を唱えれば弱点がつけると相場が決まっているんだけど…どうやら何かウラがあるみたいだね。」 「ディナスはそう読み取るんだ。僕は僕でこの依頼の内容見ただけだとなんとしてでも助けに向かおう、と思うんだけど…。」 「依頼があるからいけない、と?」  自身の言葉に帰ってきたアオノスの言葉に、そう返すディナス。それを聞いて、アオノスは無言でうなずき…再び口を開く。 「さっきも言ったとは思うけど、僕、これから任務なんだ。…その任務っていうのが色須魔国を名乗る謎の組織がある世界の大きな戦争の歴史を変えようとしているのでそれを阻止してほしいというもの。…カセリナとクドルスが向かっている任務と同じような類の任務だよ。」 「クドルス…ああ、あの人今ぬいぐるみの世界で悪者の悪事に加担してその世界の三体の英雄を滅ぼそうとしているのを阻止する任務に向かっているんだったね。」 「うん。…ディナス、お願いできるかい?」  ディナスにそう頼み込むアオノス。ディナスは少しの間考えたのち。答えを出した。 「分かった。仲間を探して向かってみるよ。」 「恩に着るよ、ディナス。…この埋め合わせは必ずする。」  アオノスがお礼を言ってその場を立ち去り、何処かへと向かう。…恐らく装置のある部屋に向かっているのだろう。一方のディナスはアオノスがお礼を言い終えると同時に自身の仕事…書類仕事に向かった。  サラサラサラ、ボールペンで文字を書く音が執務室に響き渡る。それが終わったのは、お昼休みを終えてからしばらくしたころ。カップに入れられたコーヒーを飲み干したのち。ディナスは装置のある部屋へと向かう。  金属でできた大きな装置。…過去にディナスが機械の不具合で本来向かうべきところとは別の場所へ移動してしまう、という事故が起こって以降、そういった不具合が起こりにくいように改良されたものだ。  行き先の識別番号を入力し、ディナスの体が光へと包まれる。…そして、ディナスは青い空の下で所々に炎が上がっている、という酷い有様の世界へと降り立った。 「…手遅れかどうか、それを判断する前に残っている集落へ向かいましょう。」  未だ行方不明のバクレスが残した薬の中から何本か拝借した薬瓶を確認したのち。ディナスは荒廃した大地の中を歩いていく…と、その道中で人型の金属製の人形と遭遇した。…その頭部たるや丸っこく、かわいらしい物をほうふつとさせるが…そのボディは正しくロボット、と言ったような角の目立つフォルム。ディナスは自身の頭の中にあったセオリーをまず試し始めた。 「"ギボエルト"!」  金属でできた人形には、雷属性が効きやすい。組織で依頼などをこなすうえでの鉄則を実行するディナスであったが…人型の金属製の人形はまるで武蔵坊弁慶のように立ったままその雷属性の呪文を受けると…それが効いていないことを分からせるかのように腕を振るい、雷属性の呪文を弾き消す。 「やはりただ事ではなさそうだね。対策は何度か対面するうちに分かることと思うから…あらゆる手を試そう。」  様々な呪文を試し始めるディナス。…突如として現れた金属製の人形。…この世界で一体何が起こっているというのか。
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