エピソード1

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エピソード1

私の名前は三浦千代子。「チョコ」と呼ばれて育った。小さな雑誌社に勤務している普通のOL。うちの会社を支えていると言っても過言ない先生は官能小説家の神林先生。でも担当が頻繁に変わるほどの変わり者らしい。 「チョコ!」 「はい!」 「ちょっと来い!」 「はい…。」 <私は何かやらかした?>と思いながら編集長のデスクの前に立った。 「あのな。今日、神林先生のとこに原稿取りに行って欲しいんだけど…。」 「え?それって二木さんが…。」 「今日休んでるんだよ。」 「わかりました…行って来ます。」 「そこでだ!うちの雑誌は誰の連載で持ってると思う?」 「神林先生」 「正解!だから…。」 「だから?」 「絶対に何があっても機嫌を損ねるな!全て引き受けろ!良いな!」 「は…い…。」 「頼んだぞ!」 「はい…。」 この時は、まだ編集長の言ってる意味がわからなかった。 ピンポーン 「はい。」 モニター越しに声をが聞こえた。この小さなカメラの向こうに私を見てる人が居ると思っただけで、いつも緊張する。 「十和田社の三浦千代子です。」 「どうぞ。」 「失礼します。」 大きなドアを開けて玄関に入った。部屋の奥から背の高い端整な顔立ちの男の人が出て来た。 「あの…原稿を受け取りに参りました。」 「あと少しで終わるから、あがって待ってて。」 「あ…はい。失礼します。」 「ごめん。コーヒー淹れてくんない?」 「はい。かしこまりました。」 「君のも一緒に…。」 「はい。」 編集長があんな言い方するから、もっと気難しい感じの人かと思ってたけど優しい人だ。コーヒーを淹れていると背後から視線を感じた。振り向くと先生がパソコンの前で手を組んで私のことをジッと舐めるように見ていた。 「あの…もうすぐ淹れ終わりますので…。」 「うん…。」 《バスト83ウエスト62ヒップ88といったとこかな…なかなかいい体してんじゃん。どんな風にしてやろうかな…。》 「お待たせしました。」 「ありがと。こっちも、もう少しで終わるから待っててね。良かったら僕の作品読んでて…。」 「良いんですか?」 「ふふ…笑。良いよ。」 「ありがとうございます。」 大きな本棚には先生の作品がたくさん並んでいた。私は棚の上の方にある作品が読みたくて手を伸ばしたが、届かない。諦めようと思った時、後ろから手が…。 「はい。どうぞ。」 神林先生がニコッと笑って本を渡してくれた。とろけそうな程のスマイル。 <何で担当者がコロコロ代わるのか?全くわからない。好きになっちゃうから?かな。それならわかる気がする…。> 「ありがとうございます。」 私は夢中で読んだ。先生の作品は自分が作品中の女性に直ぐに置き換わるほど…リアルだ…。 「どう?」 ビクッッ いつの間にか没頭していて隣に先生が居たことにも気づいたいなかった。 「あ…はい。凄いです。お借りしても良いですか?」 「また読みにおいでよ。いつでも来て良いよ…。」 「ありがとうございます。」 「一つ質問しても良い?」 「はい。何ですか?」 「俺の読んで…」 「はい。」 「濡れた?」 「へ?」 <どうしよう。正直言って、濡れたから家に帰ってじっくり一人で読みたいと思った。どう答えるべきだろう。> 編集長の言葉が頭の中をグルグル回る。「機嫌を損ねるな!」 ここは正直に言う答えることにした。 「はい。濡れました。」 「ふーん。」 「先生の作品は、私が今まで読んだ官能小説の中で1番濡れました。」 《スカートを握りしめて言うあたり、緊張しているのが伝わる。こいつ本当のことを言ってる?》 「じゃーさ、確かめさせて。」 「え?」 <何言ってんだ?この人。確かめるって、どうやって?> 「どうやってですか?」 「ん?こうやって。」 いきなりソファに押し倒されて、スカートの中に手が…。 「や…やめて下さい。」 手で必死に先生の手を抑えた。 「俺さ、嘘つくのも嫌いだけど、嘘をつかれるのは、もっと嫌いなんだよね。」 先生は私を見下ろして真顔で言う。編集長の言葉再び頭を過る。「何でも引き受けろ!」 《さぁ、どうする?》 「わかりました。」 《お!やるじゃん!》 私は目を閉じた。少しの我慢。いや、イケメンに触られてると思おう。恋人とか好きな人とか。先生の手が内ももを撫でるように這う。同時にスカートもめくれ上がり、下着が露わになった。下着の中に指が入ってきて…確認…中。 「んん…。」 「ほんとだ…濡れてる。」 「もう…良いですか?」 《なかなか、かわいい反応するじゃん。》 「もう少しかな。」 「あ!せん…せい。」 「ん?ここ気持ち良いでしょ?」 私の中の指が下腹部側の膣壁をなぞるから子宮がキュンと締まった。そして、あろうことかクリトリスも併せて弄り始めた。 <そんなの濡れてる事と関係ないじゃん。あ、でも、気持ち良い。さすが官能小説家。気持ち良い場所がわかってる。このまま弄られ続けたら、私イっちゃう。> 「もう…。」 「ん?イきたいなら、イって良いよ。」 「んん…あん…あ…。」 <私、どうかしてる。初めて会った人に…こんな…。> 《良い声だすじゃん。採用合格かな。》 結局、ソファの上で先生の意のままにイかされた。 「うん。膣の締まりも良好!うん。合格。明日から毎日ここに来て、俺の身の回りの世話をすること。それから、執筆の協力も。もちろん、今まで通り連載も書くよ。ま!君の返事次第だけどね。」 「あの、会社には…?」 「俺から連絡しとく。」 「そうですか…。」 「嫌?」 「あ、いえ、嫌じゃありません。」 「そっ!じゃあ、決まりだね。勤務時間は朝九時から夕方六時まで。残業あり。」 「はい。かしこまりました。」 私は、ぼーっとしながら先生のお宅を出て会社へ戻った。先生の指の感触がまだ残ってる。 <気持ち良かったな…。> 「お疲れ様です…。」 「チョコ!ちょっと…。」 編集長から手招きをされミーティングルームへ。 「お前、神林先生と何かあったのか?」 「え?何でですか?」 「いや、神林先生から、明日から、お前を毎日来させてくれって連絡があったんだよ。」 「あ~なんか、そうみたいで…。」 「あの人がアシスタントを雇うなんて話聞いたことないから、皆んなビックリしてんだぞ!」 「アシスタントというより、身の回りの世話をするだけみたいです。」 「そうか…まぁ~明日からは出社しなくても良いから。連絡だけして来い。いいな?」 「はい…。」 「あ!これ!先生からFAX来てた。色々な決まり事が書いてあるから今日中に確認しとけよ。」 「はい。」 「もう今日は帰って良いぞ。」 「はい…お疲れ様でした。」 私は先生の家で読んだ小説の続きが気になり、帰りに本屋に寄って買って帰った。 「なんか…疲れた…。」 頭の中は先生のことでイッパイだった。真っ直ぐに見つめられた事やイかされた事、また下腹部が疼いた。その疼きを慰めるように先生の本を読んだ。 <そういえば…。> 先生からのFAXを手に取り内容を確認した。 <細かいことは置いといて…。って何これ?> *朝は起こすな! *スカート必須(膝丈より上) *話しかけるな! *俺の言うことを聞くこと! <いやいや、スカートの決まり事おかしいよね?笑> 翌朝、そっと家に入り、とりあえずコーヒーを淹れた。 <何しよ?いつ起きてくるか?わからない先生の為に朝ごはん?米だけでも炊いとこうかな…。> 昨日読んだ先生の小説だと【朝ごはんを作ってる彼女の後ろから、いつの間にか起きて来た彼が首筋にキスをして胸を触り…少しずつ感じて来た彼女の下半身へ指を滑らせる】 <やば!朝から激しく想像し過ぎた。> 米をといで味噌汁の製作に取り掛かったところで、いきなり腰に手、肩に頭。 ビックリして体がビクッとなった。 「おはよ…。」 「お…おはようございます。」 「何作ってんの?」 「お豆腐の味噌汁です。」 「ふーん…豆腐とお前の胸どっちが柔らかいかな…?」 ピクン! 「ん…!!!」 《胸に手を添えただけで体をくの字にして…感じ過ぎ笑。》 <朝から変な想像するんじゃなかった。完全に小説とリンクして感じる。> 「せん…せい。」 「ん?」 「だめ…です。」 「俺の言うこと聞くんだよな?」 「ん…はい…。」 胸を包み込み優しく廻しながら揉まれ、体が火照ってきた。 <どうしよ…膝に…力が…。> 《今日も濡れてるんだろうな。確かめるか?それとも…。》 「やーめた。仕事してくるから、できたら呼んで。」 「はぁはぁ…はい…。」 《ムラムラさせといて、あとで解放してやるかな…。》 私は先生からスイッチを入れられて悶々としながら朝食を作った。 「先生、ご飯ができました。」 「ん?ありがと。」 ソファに横たわる先生の綺麗な横顔。 <何を考えてるんだろ…?> 私たちはダイニングテーブルに向かい合って座った。 「うまそ〜。」 「お口に合えば良いですが…。」 「うん!味噌汁合格。」 『良かった~。」 《そんな風に笑うな。どうにかしたくなる…。》 「お昼は何が良いですか?」 「今、朝飯食ってんのに昼飯の話されても…。」 「あ…そうですよね。すみません。」 「お前でも食おうかな…。」 「へ?」 「ぶっっ笑。鳩が豆鉄砲食らったような顔してんぞ!笑」 「だ…だって…。」 《真っ赤。全身赤くなってんじゃねーの?アソコも?どうやって遊ぼうかな…》 「真っ赤だぞ…笑。冗談に決まってんだろ。いちいち本気にするな。」 「そうですよね…。」 <私みたいな女に興味なんて無いよね。ひとりで舞い上がってバカだ。もっと冷静になんないと…。> 「ごちそうさまでした。」 先生は台所に食器を持って行き、まだ椅子に座ってる私に後ろから抱きついて… 「さっきの続きしようか?」 「じょ…冗談はやめて下さい。いちいち本気にするなって…たった今、言ったばかりじゃないですか…。」 「冗談かどうか確かめる?」 「……ん…はぁ…。」 先生の唇が首元を撫でる。首元から耳…耳から頬へ…。 《いちいち反応する身体。目を閉じて下を向いて声が出ないように、本気にしないように耐えてる姿が堪らない。そろそろかな…。》 先生の唇が頬から口元へ顎を持たれて…キスされ…る? ペロ… 「取れた!」 「え?」 「卵焼きの食べカスを口んとこ付けてる女…初めて見たよ笑。取ってやったんだからお礼は?」 「あ…ありがとう…ございます…。」 先生はケラケラと笑って書斎へ入って行った。 <あんな風に笑うんだ…。斬新な取り方だったな…。何てこと?私はからかわれてるのに、先生の笑顔に癒されて、挙句に取り方に感心までするなんて…バカだわ。> 「だめだ。心臓も体も持たない。完全に弄ばれてる…。」 私はダイニングテーブルに突っ伏した。でも私の中の私が何故か先生を嫌いになれないでいた。何だか気になる存在…。 コンコン 「はい。」 「コーヒー淹れました。」 「ありがと。そこに、置いといて。」 「はい。」 <パソコンに向かって考えごとしてる横顔かっこいいな。> 「なぁ〜?」 「はい?」 「自慰行為したことある?」 「え?あ…はい。あります。」 《素直だな(笑)。》 <不思議…先生になら全部さらけ出せる。> 「今さ、その部分を書いてて協力してくれる?」 「ん?協力ですか?」 「うん。俺の前でやって。」 「先生の前で?ですか?」 「うん。」 「それは、ちょっと。」 「協力してよ。書きたいのに書けないんだよ。」 《さぁ〜どうする?ちよこちゃん。》 「それ…書けない場合はどうなりますか?」 「その場面を変更するか、自慰行為をしたってことだけ書くか。 詳細な描写がある方が読み手にとってはドキドキするよな〜。」 《心が動いてる?俺の前でやる?》 「わかりました。何処でしたら良いですか?」 《お!やるじゃん。》 「いつもは何処でしてんの?」 「ベッドかソファか。」 「どっちでも良いよ。それソファベッドだから、どっちにでもなるよ。」 「先生は、どっちの描写が欲しいですか?」 「どっちでも。俺は行為を見たいだけだから。」 「どんな設定ですか?」 「ある男が、自慰行為をしている女をこっそりと覗き見するんだ。女は覗かれていることに気付き、更に興奮してっていう感じかな。」 「わかりました。じゃぁ、先生がその男っていうことですね?」 「そうだね。」 つづく
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