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そう言って山岸はつまらなさそうな顔をした。藤原は信二の苗字だ。 「あいつ、絡みにくいんだよな」 確かに信二は無口だし、いつも何考えてるかわからないような顔をしているけれど、本当は優しい奴なんだぞ。それに、信二は顔がいいしモテるんだ。本人は気づいていないみたいだけど。 「ま、美術学部のやつは変わったやつ多いしなー」 「藤原も例に漏れず変わってるよなー」 「お前らが言うなよ」 そんなことを話していた時だった。ガラッという音と共に扉が開かれ、俺は突然バックハグをされるような形で誰かに抱きしめられた。 「裕樹……お待たせ。帰ろう?」 耳元で聞こえる声は、紛れもなく信二の声だった。 「ちょ、ちょっと待った!?離せっ!」 必死にもがくものの、小学生並みになった俺の力では成人男性の力に敵うはずもない。 「人がいるから!?やめろっていってんの!!」 すると信二はやっと腕を緩めて解放してくれた。 「ごめん……。つい嬉しくて……」 しゅんとした様子で言う信二。犬なら耳としっぽが垂れているところだろう。  「え?今のなんだったの?」 「SPはやることがちげぇや」 「中西!余計なこと言わなくていいからっ!」 俺は慌てて叫んだ。 「お、俺たち帰るわ」 「おう!また明日なー」 2人に手を振りながら、俺は信二と一緒に部室を出た。
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