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「おい、信二!恥ずかしいからいきなり抱きつくなって何度も言ってるだろ!」
帰り道。俺と信二は並んで歩いていた。
捨てられた子犬のような目で見つめてくる。多分、俺に怒られて落ち込んでいるだけだと思うけど。
「……裕樹がかわいいのがいけないと思う」
「人のせいにするな!」
信二がしょんぼりした顔のままこちらを見る。本当に大型犬みたいだ。
俺は小さくため息をつく。
「お前、もう約束忘れたのかよ」
こいつの告白の答えも、その他諸々も、俺が元の姿に戻れてからって約束したはずだ。
「覚えてる」
「じゃあなんで」
「もう気持ち言っちゃったし、裕樹を見ると我慢できない」
はぁ、ともう一度大きくため息をつく。
「そこは頑張って我慢してくれよ。頼むから」
「ああ……」
信二は渋々と納得したようだった。
「なら、早く元に戻って欲しい」
「それは無理だってわかってるだろ。父さん次第なんだから」
「うん、わかってる」
即答かよ。それはそれで割り切りがすごくて嫌なんだけど。
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