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満月の夜
月に向かって呪文を唱えると、どこからともなく"オオカミさん”が現れて何でも一つ、願い事を叶えてくれる。
そんなことが書かれた本を見つけたのは、この春に取り壊しが決まっている町はずれの小さな図書館。
おつかいの途中、その図書館の裏口の鍵が壊れているのを偶然発見してしまった僕は、子供ながらの好奇心でそぉっとその場に忍び込んだ。
中は肌寒く、酷く埃っぽい。
ダンボールの山に、乱雑に積まれた椅子。そして本棚には並べられず無造作に積まれている本が山のようにあった。
「いいなぁ、こんなにたくさんの本があるなんて」
窓から差し込む明かりだけを頼りに、僕は一つ一つ本を手に取る。
これだけたくさんの本があれば、学校の休み時間も退屈をしないぞ。
……友達がいない僕でも、きっと退屈をしない。
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