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「あ、そうだ、小太郎君」
「なんですか?」
「八千代ちゃんが言ってたよ。
いつかあたくしも真っ白なウエディングドレスが着てみたいですわーって」
「はっ……? あ、そうですか」
小太郎君が、目をキョトキョトさせている。
小太郎君ってば、密かに八千代ちゃんのことを意識しちゃっているみたいだ。
ちなみに、私は最近、八千代ちゃんのお店『びいどろ』で、お菓子作りや給仕のお仕事を手伝っている。
考えてみれば、タイムスリップする前も、令和のカフェでバイトしていたんだから、なんだかおかしな気もするけど。
案外、自分に向いてるお仕事なのかな、って思ったりもしている。
まだまだ上手とは言えないけれど、いつか美味しいお菓子をみんなに食べてもらえるようになりたいな、なんて思って……、日々奮闘中の私なのだ。
「やあ。楽しそうだね。僕も手伝おうかな」
振り返ると、薫さんが壁にもたれて、こっちを見ている。
「薫さま。薫さまに食器洗いなんてさせられるわけないじゃないですか。大体、男子、厨房に立ち入らずって……」
「小太郎だって男子じゃないか」
「俺はいいんですよ。使用人ですもん」
「ずるいな。そうやってまた花をひとり占めして」
「なっ……。変なこと言わないでください。
そんなこと、あるわけないじゃないですかっ」
「分かってるよ。言ってみただけだ」
薫さんがクスリと笑うと、小太郎君の顔をのぞきこんで言った。
「小太郎。今日はもう帰りなさい。その八千代とやらをデートに誘ってやるといい」
「なな……何をおっしゃっているんですかっ! 別に俺は、別に俺はそんなっ」
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