62人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
彼は、私を見つめると、ちょっと首をかしげて言った。
「百年先の大日本帝国は、どうなっているんだろう?」
「だいにっぽんていこく……ですか?」
「戦争をしている?」
「いや、してないですけど……」
荷馬車が土煙をあげて、目の前を通り過ぎていく。
それを横目で見て、私は言った。
「とりあえず、ふつうに馬車は走ってないですね。みんな自動車です」
「近代化が進んでいるんだね」
「そうですね。進みすぎて、地球ヤバイんじゃないかって話になって」
「地球がやばい」
「それで最近じゃ、SDGsなんかが話題になって」
「えすでぃーじーず」
「はい。持続可能な……なんだったかな。
とにかく今のうちから、気を付けておいたほうがいいですよ。
大気汚染とか温暖化とか」
彼は目を伏せると、クスッと笑った。
「……面白そうだ」
「お、面白い話、してました?」
っていうか、なんでこんな話してるんだろう、私。
「僕は、一ノ瀬薫という」
「か、かおるのきみ?」
「薫でいい。ついておいで」
彼は、二、三歩先を行くと振り返り、私の目をのぞきこむようにして言った。
「困っているんだろう?」
最初のコメントを投稿しよう!