*群雲まよふ

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彼は、私を見つめると、ちょっと首をかしげて言った。 「百年先の大日本帝国は、どうなっているんだろう?」 「だいにっぽんていこく……ですか?」 「戦争をしている?」 「いや、してないですけど……」 荷馬車が土煙をあげて、目の前を通り過ぎていく。 それを横目で見て、私は言った。 「とりあえず、ふつうに馬車は走ってないですね。みんな自動車です」 「近代化が進んでいるんだね」 「そうですね。進みすぎて、地球ヤバイんじゃないかって話になって」 「地球がやばい」 「それで最近じゃ、SDGsなんかが話題になって」 「えすでぃーじーず」 「はい。持続可能な……なんだったかな。 とにかく今のうちから、気を付けておいたほうがいいですよ。 大気汚染とか温暖化とか」 彼は目を伏せると、クスッと笑った。 「……面白そうだ」 「お、面白い話、してました?」 っていうか、なんでこんな話してるんだろう、私。 「僕は、一ノ瀬薫(いちのせかおる)という」 「か、かおるのきみ?」 「薫でいい。ついておいで」 彼は、二、三歩先を行くと振り返り、私の目をのぞきこむようにして言った。 「困っているんだろう?」
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