63人が本棚に入れています
本棚に追加
「うわああああ」
という叫び声で目が覚めた。
「な、なに?」
目を開くと、知らない男の子と目が合った。
こざっぱりとした藍色の和服姿で、書生さんのようなスタイルだ。
短い髪の毛、きりっとした感じのつり目。高校生くらいだろうか。
「だ、だ、誰ですかっ?」
いや、こっちのセリフなんだけど。
私は寝ぼけたアタマの中で、突っ込んだ。
というか、ここはどこなんだっけ……。
「か、かっ」
「……か?」
「か、薫さまがッ」
――そうだ、薫さんだ。ここは薫さんの洋館だ。
私、大正時代にタイムトリップして、薫さんに助けてもらって、泊めてもらって。
「薫さまが、娼婦を家に連れ込むなんてッ」
それで、娼婦になって連れ込まれて。しょ、しょうふ?!
「破廉恥だああ!」
彼は絶叫すると、部屋から立ち去った……。
「なんだったんだ……今のは」
ひとり言をつぶやき、私はのそのそと起き上がった。
壁にかかった鏡をのぞいてみる。
肩口まで伸ばした髪は乱れて、寝巻の浴衣の合わせがずれ、下着があらわになっている。
「うーん……」
私は唸って、ポリポリと頭をかいた。
こんな格好じゃ、娼婦と間違えられたのも、無理はないかもしれない……。
とにかく私は顔を洗い、髪を整え、来た時の服装――ボーダーのカットソーに、生成り色のスカートという格好――に着替え、階下に降りた。
最初のコメントを投稿しよう!