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「おはようございます……」
「おはよう。よく眠れたかい?」
応接間のソファには、ニッコリと笑顔の薫さん。
私は「はいっ」と、元気よく返事をした。
朝の陽ざしに、薫さんの薄茶色の髪が透けている。
すべらかな肌、上品な感じのする形のよいくちびる、繊細そうな頬のライン。
青みがかったグレーの瞳は、深い泉にも似て神秘的だ。
「どうかした?」
「いえ……」
ちょっとあなたに見とれていまして、なんて言えっこない。
「ええと、薫さんって、もしかしてハーフなんですか?」
薫さんは「ああ、母親がイギリス人でね」と答えて、紅茶のカップに口をつけた。
「それより朝食は? 食べるだろう?」
さきほどの短髪の男の子が、黙って朝食を運んできた。
ロールパンにサラダ、豆のスープ。
「わあ、おいしそう。いただきまあす」
私ははしゃいだ声をあげて、さっそくスープに手を伸ばした。
「……すごい食欲」
あきれたような声が響いて、顔をあげると、短髪の男の子が、冷めた目でこちらを見ている。
「……パンくず。いっぱい散らばってますよ」
「あ……えっと。ついおいしくて」
私はへらへらと笑いながら、指先でパンくずをかき集めた。
「紹介しよう。彼は小太郎という。身の回りのことを手伝ってくれている。このパンも、小太郎が焼いたんだよ」
「へーっ。ほんとに? すごいですね!」
「小太郎、こちらは神崎花さんだ」
小太郎君は、ツンとそっぽを向いて口を開いた。
「それにしても、薫さまも趣味が悪いですね。何もこんな、みょうちきりんな女を、娼婦にしなくても」
「そうかなあ?」
薫さんは澄ましている。
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