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「女を連れ込むなとは言いませんが、変わったことがあるのなら、俺に言っておいてください。さっきはびっくりしましたよ。
換気しようと二階に行ったら、この女、すごい格好で寝てるんですもん」
「すごい格好って?」
「足出して、半チチで……」
半チチって……。
そりゃ多少、寝巻がはだけていたかもしれないけれど。
私はうつむいて、自分の胸を押さえた。
「それはラッキイだったね」と、薫さんは軽く笑う。
「別にラッキイじゃないですよ!」と小太郎君は、むきになったように返した。
「小太郎。実はね、花は珍しいお客様なんだよ。とても遠いところから来たんだ」
「遠いところ、ですか」
「そうだよ。令和っていうところ」
「もしかして外国ですか?」
薫さんが、くすりと笑った。
「ううん、もっと遠いところだよ」
「薫さまが、前に、ロンドンという都市にいらっしゃったのは存じてますが……。そこより、もっと遠いんですか?」
「……そうじゃなくてね。
令和っていうのは、百年後の時代の名前。花は時間旅行してきたんだよ」
「はあ? 何をおっしゃっているんですか?」
「うーん、やっぱり信じないかな。……花、大正の次の元号は何だい」
私は食事する手を止め、「えっと、昭和ですね」と答えた。
それからちょっと考えて、おぼろげな知識を披露する。
「大正時代って、短くて。確か十五年くらいで終わるんですよね」
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