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「はいいっ?」
小太郎君が、ダンッとテーブルの上に手を置いて叫んだ。
「それはどういう意味ですか?! まさか、天皇陛下が近くご崩御されると?」
「え? ご、ごめんなさい」
反射的に謝ってしまう。
「薫さま。さしでがましいようですが、俺、この人おかしいと思いますよ。何かあやしい占いでもして、たばかっているんじゃ」
薫さんが、首をすくめて苦笑した。
「……参ったな。今のは僕が悪かったよ。未来が分かるというのは、面白いけど、怖いものでもあるからね。……ねえ、花はどう思う?」
「はい……?」
私はキョトンと薫さんを見つめた。
「時間旅行などと言って、世間の騒ぎになるのも、本意ではないだろう。
君は妹を見つけて、元の時代に帰りたい。それだけだよね」
私はうなずいた。
薫さんの言う通りだと思う。
タイムトリップのことは、むやみに人には言わないほうがいいのかも。
「今日は街に出て、雪ちゃんを探してみようと思います」
雪ちゃんは、この時代では珍しい制服姿だし、きっと誰か、姿を見かけた人もいるに違いない。
スマホがつながれば、雪ちゃんの写真もあるんだけど……。
そこまで考えて、私は「そういえば」と財布を取り出して中をのぞいた。
「やっぱりあった。見てください、これ! 雪ちゃんと一緒に撮ったの」
「写真? こんなに小さい、色付きのが?」
「プリントシール。薫さんにも一枚あげますね」
切り離して、一枚差し出す。
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