*うるはしき白薔薇邸

6/10
前へ
/123ページ
次へ
「はいいっ?」 小太郎君が、ダンッとテーブルの上に手を置いて叫んだ。 「それはどういう意味ですか?! まさか、天皇陛下が近くご崩御されると?」 「え? ご、ごめんなさい」 反射的に謝ってしまう。 「薫さま。さしでがましいようですが、俺、この人おかしいと思いますよ。何かあやしい占いでもして、たばかっているんじゃ」 薫さんが、首をすくめて苦笑した。 「……参ったな。今のは僕が悪かったよ。未来が分かるというのは、面白いけど、怖いものでもあるからね。……ねえ、花はどう思う?」 「はい……?」 私はキョトンと薫さんを見つめた。 「時間旅行などと言って、世間の騒ぎになるのも、本意ではないだろう。 君は妹を見つけて、元の時代に帰りたい。それだけだよね」 私はうなずいた。 薫さんの言う通りだと思う。 タイムトリップのことは、むやみに人には言わないほうがいいのかも。 「今日は街に出て、雪ちゃんを探してみようと思います」 雪ちゃんは、この時代では珍しい制服姿だし、きっと誰か、姿を見かけた人もいるに違いない。 スマホがつながれば、雪ちゃんの写真もあるんだけど……。 そこまで考えて、私は「そういえば」と財布を取り出して中をのぞいた。 「やっぱりあった。見てください、これ! 雪ちゃんと一緒に撮ったの」 「写真? こんなに小さい、色付きのが?」 「プリントシール。薫さんにも一枚あげますね」 切り離して、一枚差し出す。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加