63人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとう。こっちに映っているのは、花かな? ちょっと顔だちが違うようだけど」
「ああ……。加工しているから……」
「このポーズはなに?」
「え? ピースのことですか?」
薫さんは、じっとプリントシールに目を落とすと、大事そうに胸ポケットにしまった。
「珍しいものをもらったお礼に、これをあげよう。入用なものを買うといい」
ぽんと、がま口の財布を渡された。中をのぞいてみると、昔のお金が入っている。
「ありがとうございます。正直、一文なしなのって心細いし、お金を借りられるのはありがたいなって」
薫さんはほほえんだ。
「気にしなくてもいい。
その代わり、もしも妹を見つけたら、ちゃんとここに戻ってきて、僕に報告すること。
それまでは、客人として二階を提供しよう」
私は「はい」とうなずいた。
「もっと未来の話を聞きたいところだけど、実はこれから出掛けなくてはならないんだ。片づけなくてはならない仕事があってね」
「そうなんですか……」
私は、ちょっとだけがっかりした。
薫さんと、一緒にいられないのは残念だけど、お仕事ならば仕方ない。
「僕のかわりに、小太郎に色々手伝ってもらいなさい」
「え。なんで俺が」
小太郎君は、不満そうな顔をしている。
最初のコメントを投稿しよう!