*花と雪

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いつもの帰り道を少し逸れて、河川敷を歩いてみた。 空は、すみれ色の縞々模様。 遠くに、一番星がかすんでいる。 あれは、お父さんの星……。 ぼんやりしていたせいか、思い切り水たまりを踏みつけてしまった。 水しぶきが跳ね、私は小さく悲鳴をあげた。 こんな日に限って、白っぽいスカートなんてはいてきている。 ハンカチでスカートをぬぐいながら、思わずため息をついてしまう。 ――今日は、私の誕生日なのに。なんとなくついてない。 後ろから走ってきた自転車が、私を追い抜き、ブレーキをかけて止まった。 「お姉ちゃん」 あたしを振り返って、「よっ」と言うように片手をあげる。 三歳下の妹だ。 「雪ちゃん!」 私は名前を呼んで、小走りに駆け、妹の横に並んだ。 「今帰り?」 「うん。お姉ちゃん。何やってんの?」 「水たまり踏んじゃってさあ」 雪ちゃんは自転車を押して歩きながら、「ドジだねえ」と言った。 「それより、聞いて。今日でエトワール閉店なの。私、明日から無職ですわ」 「ふうん、お疲れ様」 「あれ。興味ないかんじ?」 「ううん。売れ残りのケーキがもらえなくなるのは残念だよ」 雪ちゃんは、片方の唇をあげて笑った。 この子は昔から、「なつかない猫」という感じがする。 基本的にクールなのだ。 スラリとしなやかな体、色白の肌に、ストレートの髪をポニーテールにしている。 衣替えしたばかりのブレザーの制服、まぶしいくらいの白いシャツ。 私は「あーあ」とため息をついた。 「いいよね、雪ちゃんは。美人だし、リア充って感じ。あたしも高校生に戻りたいよお」 思えば、私だって高校の頃は、楽しかった気がする。それなりに。 「もし高校生に戻れたら、何するの?」 雪ちゃんに聞かれて、「ちょー真面目に勉強して、女子大生になる」と答えた。 「タイムマシンがあればなあ」
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