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雪ちゃんは前を向いたまま、口を開いた。
「タイムマシンなんてなくたって、本気で女子大生になりたければ、今から真面目に勉強したらいいじゃない?
大体女子大生になって、そのあとはどうするの?
どうせやりたいことも決まってないんでしょ。お姉ちゃんは計画性もなければ主体性もない。いつもフラフラしていて、頼りにならない」
私は「うう」と首をすくめた。
至極まっとうな意見だと思う。
耳が痛い。
「いいよ、もう。どうせタイムマシンなんてないんだから。
明日から、まじめに就活しますよっと」
「それがね。タイムマシンって、理論的には無理じゃないはずなんだよね。
ほら、相対性理論ってあるでしょ。
例えば光速99%の速さの宇宙船に乗れば、時間の速さは7分の1になる。宇宙船で、地球より強い重力のブラックホールの近くに滞在すれば……」
何やら難しい話がはじまった。
川から吹き上げた風が、私たちのスカートを膨らませる。
「お姉ちゃん。聞いてる?」
「聞いてるよ。何ちゃら性理論でしょ」
「相対性理論ね」
雪ちゃんは、私のほうを見ると、ふいに言った。
「あのさ。今日、ハタチの誕生日でしょ。実はプレゼントがあるんだよね」
「え、嬉しい。なあに?」
私のテンションは、たちまちあがった。
雪ちゃんは口元に笑みを浮かべて言う。
「家に帰ってからの、お楽しみだよ」
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