60人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
*群雲まよふ
気が付くと、地面の上に倒れていた。
「あいたたた……」
私はスカートについた砂を払って、起き上がった。少しめまいがする。
一体ここは何処だろう?
雪ちゃんと、家のガレージにいたはずだけど。
まばたきをして見渡せば、街の様子がいつもと違う。
いつもなら、河川敷をまっすぐ行けば、提公園に出て、橋のふもとの信号のところにコンビニがあって、イケダ珈琲店の新規オープンの、のぼり旗が風に揺れているはずなのに。
なんだか古めかしい、日本家屋の、屋根瓦が連なるばかりだ。
イケダ珈琲どころか、信号さえも見当たらない。
「……雪ちゃん?」
私は、キョロキョロと妹の姿を探した。
ポケットからスマホを取り出してみれば、画面は真っ暗だ。
こんなときに充電切れ……?
電源を何度か押してみる。反応なし。
数人の子供たちが遠巻きにこちらを見ている。みんなそろって和服姿だ。
「ねえ、誰かケータイ持ってない?」
子供たちに話しかけてみたら、ぱあっといなくなってしまった。
私は仕方なく歩きだす。
どこまで歩いても、知っている道に出ない。
自動車に混じって、荷馬車が砂煙をあげて走っている。
最初のコメントを投稿しよう!