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はつゆめ。
「あけましておめでとう~!」
「あ、美緒ちゃんおはよ。あけおめ~」
三学期。新年というだけで、なんだか妙に晴れやかな気持ちになっている。今日は天気もいい。私が教室に入るなり、友達の美緒がお決まりの挨拶をしてきた。
「ねえねえねえ!流美ちゃん流美ちゃん。あけおめついでに聞いてよあたしの愚痴!」
「おう、新年早々愚痴か。なに?受験の話でもジジババにされて嫌だったとか?今のままじゃどこの高校も受からんぞと説教されたとか?」
「ちっがーう!いや、まあそういうこともあったけど!」
私達は現在中学二年生。つまり、今年の四月には三年生で、受験生になるということだ。成績が常に低空飛行、この間の期末試験ではテストを全て焼き捨てて葬りたいとまで言っていた美緒である。そりゃ実家に帰って早々心配されるのも無理からぬことだろう。
私の言葉に彼女はぷくう、と頬を膨らませて続けたのだった。
「初夢が最悪だったの!ほんと怖かったんだから。初夢って縁起のいい夢ばっかり見ると思ってたのにー」
「あらら」
そういえば、と私は思い出す。初夢って、いつ見る夢のことを指すのだったか、と。
以前先生に尋ねたところ、答えは“はっきり決まってない”だったような気がする。大晦日から一日に見る夢のことを初夢ということもあれば、一日の夜に見る夢を初夢ということもあるし、なんなら二日の夜に見る夢を指すこともあるという。
もしくは、一日以降に“初めて見た夢”なら、全部初夢に該当するなんて考え方もあるようだ。一番最後のがもっとも妥当なような気もする。そもそも大晦日とか一日に、ちゃんと夢を見る確証などどこにもないからだ。夢を見たいと願って寝れば自由に夢を見られるなんて特技を持つ人も稀にいるらしいが、大抵の人は自分で望んで夢を見られるわけではない。ぐっすり熟睡してしまえばしまうほど、夢なんか見られないで終わってしまうものである。
「美緒ちゃんにとって初夢っていつの夢なのさ?」
私が疑問に思ったまま口にすると、大晦日の夜じゃないの?と返ってきた。
「あ、でも零時過ぎてから寝たから、一日に見た夢ってことになんのかな?感覚としては大晦日の夜ってかんじなんだけど」
「まあ、どっちでもいいんじゃない?本人が初夢だと思ってれば初夢ってことで。……で、どんな怖い夢見たのさ」
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