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「それが訳分からん夢だったんだよねえ。訳分からんなりに怖い夢だったというか!」
何でも。
複雑な、迷路のような施設に閉じ込められる夢だったらしい。最初は、縦にながーく伸びる暗い廊下に立っているところからスタートしたのだそうだ。何だか嫌な予感がする、早くここから逃げたい。そう思っても、出口らしきものがどこにあるのかわからない。
前と後ろのどちらに行けばいいのか迷っていたら、次第に奇妙な音がしてきたという。前方向からだった。ねちゃねちゃねちゃ、というねばっこい音。同時に、誰かが必死で走るような音と悲鳴も一緒に近づいてくる。
凍り付いていると、次第にその全貌が見えてきた。真っ青な顔をした若い男性が必死でこちらに向かって逃げてくるのだ。そして、その後ろにドス黒い怪物のようなものがおいかけてきているのである。巨大なスライムのようなもの、とでも言えばいいのか。そのスライム状態のものから、何本ものかぎづめのような細い脚が生えているのである。それが這いずりながら、男性を追いかけてどんどんこちらに迫ってくるのだ。
「あれに捕まったらマジ殺されるって思った」
ぶるる、と美緒は体を震わせた。
「夢だってわかってりゃ多少怖くもなくなったんだろうけど、あたしは本気で現実だと思ってたしね。慌てて反対側に逃げ出すんだけど、もうパニクってるもんだから足が全然動いてくれなくて。もつれそうになりながら走るんだけど、バケモノどころか男の人にも追いつかれそうな勢いでさ。ギリギリのところで、ドアを見つけてそこに逃げ込んでドアを閉めるわけ。男の人がすぐに追いついてきて“入れてくれ”って叫ぶんだけど……あたしはもう自分が助かりたいからドア開けないで、鍵かけちゃうわけ」
「ひっど」
「しょーがないじゃん、こちとらか弱い女子中学生なんだからさあ!で、パニクりながらなんとか鍵かけたところで、ドアの向こうから男の人の断末魔みたいなのと……ぐちゃぐちゃぐちゃ、っていう何かを食べてるような音がするの。それが収まったと思ったら、ドアが向こう側からばんばんばんばん叩かれるわけ。ここにあたしがいるのはバレてる、このままじゃ殺される……なんとか逃げなきゃって、そう思うの」
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