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「大丈夫?」 『大丈夫?』  女の子がふわふわと空に浮かんでいます。背中の羽はずっと大きくなり、キラキラと鮮やかに輝いています。最初は揚羽蝶に似ていましたが、復活した今では天女の羽衣のようです。 「心配したのよ」 『心配したのよ』  女の子の胸には、他のひとに見えるような星は見えません。けれどびっくりするくらいまぶしく輝いています。体の内側に、見えない星を持っているのでしょう。  お別れのときが来たのだと、円さんにはわかりました。そっと人差し指を差し出せば、女の子があの日クリスマスツリーにしたようにそっと頬を寄せました。 「お星さま、もう見失っちゃだめよ」 『お星さま、もう見失っちゃだめよ』  どうしてでしょう。  お世話をしていたのは円さんのほうなのに、なんだかお世話をされていたのは円さんだったような気がしてきました。  たくさんの「キラキラ」を集めてきましたが、本当に「キラキラ」が必要だったのは、円さんのほうだったのかもしれません。 「ありがとう、もう大丈夫よ」 『ありがとう、もう大丈夫よ』  星の光は、もうちくちく円さんのことを刺してきません。他のひとの星の光とは少し違うけれど、円さんの星は円さんだけのもの。  星の砂が入っていた小瓶に、部屋中の「キラキラ」が吸い込まれていきました。 (それはちょっと、無理じゃないの?)  円さんが冷静にツッコミを入れると、むくむくと「キラキラ」を詰め込んだ瓶が膨らみ始めました。そして大きな大きな風船のようになります。そのまま女の子をのせて、閉まっていたはずの窓をすり抜け、空高く飛んでいってしまいました。  慌てて円さんは窓を開けました。  ちりん  しゃららん  かすかに鈴の音が聞こえたかと思うと、空いっぱい、花火のように流れ星が降り注ぎ始めます。  それは眠りに誘うような、優しく柔らかい、光の雨でした。
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