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 彼、怜斗(れいと)は純粋だ。純粋で真っすぐで、愛の与え方がとても不器用だ。  仕事終わりはいつ何時でもかならず職場まで迎えに来てくれる。お風呂はかならず一緒に入ってくれる。セックスは毎日、というわけにはいかないけどベッドでは毎日腕枕をしてくれる。朝は「おはよう」「いってらっしゃい」を言ってくれる。  これ以上の彼氏はそういないと思う。実際、大学に入るまで何人かの男の人とは付き合ってきたけど、彼ほどやさしさを愛として向けてくれた人はいなかった。  なのになぜだろう、今夜ほどそのやさしさが窮屈に思えることはない。  それはきっと、あのスカートのせいだ。 「彩葉、痛かった?」  目が慣れた暗闇の部屋のベッドの上で、腕枕をした彼が言った。え? と言いながらも、内心どきりとした。  久しぶりのセックスのあとは、汗の匂いだけじゃない香りがしていた。 「どこか上の空っていうか、あんまり気持ちよさそうじゃなかった」 「そう、かな。久々だったから、上手く濡れなかったのかも」  取り繕うように口にした瞬間、ダメだ、と思ったがもう手遅れだった。  彼が勢いよく腕を引き抜き、私の上に覆いかぶさるように跨った。青黒いシルエットに、彼の瞳だけが鈍色に光って見えた。思わず息を止めた。  そしてゆっくりと私の喉元に手が添えられて、力が込められる。 「どうして嘘をつくの? なんでスカートなんか見てたの? いつも言ってるよね、僕以外に見せるような服なんか着ちゃダメだって。誰に見せたいの? 職場の上司? 同僚? だからオフィスワークなんか辞めてリモートに切り替えろって言ったじゃないか」
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