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店内は色に溢れていたが、あのスカート以外は佳苗のデザインしたものではないらしい。佳苗はこの店のブランドである親会社にデザイナーとして雇われ、実店舗で研修をしていると教えてくれた。
商談ブースの席に着き、私たちはそれぞれの近況を話し合った。
「佳苗は夢に一直線なんだね、やっぱり佳苗らしいな」
「だって好きなんだもん、服。オシャレって自分を引き立たせるものって感じがするけど、あたしは内面を映すものだと思ってる。いろんな人の心の色や形を目に見えるものとして表現したい、そう考えていつもデザインしてる」
「その嗅覚に間違いはないと思う。あのとき、あのスカートを選んでくれたことが何よりの証拠だしね」
私ですら気付けなかった内面を、彼女は引き出した。私を彩るスカートを選ぶ、たったそれだけのことで彼女は私が想像する未来をも変えたことは確か。
もし彼女と生きていたら。私は今のように色を失っていなかったのだろう。
「――それで、彩葉は今までどうしてたの? 急に連絡も取れなくなって、久しぶりに会えたと思ったら、ノーメイクだし髪はぼっさぼさだし肌は荒れ荒れだし。綺麗だった面影のひとつも見えないんだけど」
聞かないわけないよなぁ、と思いながら私は俯いた。
俯いてちらりと覗いた佳苗の目は真剣で、多くの不安も滲ませていた。
実は、と前置きをして、私はこれまでのことを語った。
5年前に大学で怜斗と出逢ったこと。人生史上最大のやさしさに触れたこと。愛に包まれたこと。彼のために何でもしたいと思ったこと。束縛が始まったこと。オシャレを許されなかったこと。すべての知人と関係を切らされたこと。DVされたこと。行動を監視されていること。それでも、彼には私がいなきゃダメだということ――。
気が付けば私は泣きながら語っていた。
すべてを聞き終えて、佳苗は「そっか」と呟いた。
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