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「下がって‼︎ 」
ヴァルツ号に真っ先に襲いかかったのはペタルデスだった。
完全に回復していないにも関わらず、虹色の彼女は狂気的な笑みを浮かべながら攻撃を仕掛ける。狭い路地だ。ヴァルツ号にも逃げ場はなかった。
ウゥゥアアア‼︎
しかしヴァルツ号は避けるどころか、ペタルデスに頭突きを喰らわせた。
単純なぶつかり合いでは、体格に優れるヴァルツ号の方が有利だった。小さなペタルデスの体は吹き飛び、再び路地の汚れた壁に叩きつけられる。
「随分と無茶をするじゃないか。何かあったのかい? 」
「あいつ、ボクの狩り邪魔した‼︎ ツキ様にあげる人間だったのに‼︎ 」
「おいおい。聞き捨てならないことが聞こえたんだが……」
今の彼女はこちらの味方のようだ。
最もその過程で、人間を危機に追いやったことは許容できないが。
「なぁ虹色。今のあいつに銃弾は効かねぇんだな? 」
「ペータールーデースー‼︎ そうだと思うけど‼︎ 」
警部はペタルデスの返事に「そうか」と返すと、構えていた拳銃を下げた。
「ライカ。お前銀の弾丸持っていたよな」
「えぇ。今は使えませんけど……」
そこまで言って、僕はあることに気がついた。
この状況で銀の弾丸を使える「人間」が一人だけいることに。
「俺に寄越せ。ぶっ放してやらぁ」
「えー‼︎ 銀の弾丸で殺したら食べられないのにー⁉︎ 」
「肉塊化した奴なんか食うなよ……」
先生の指摘は的確だったが、ペタルデスは不満げに「むぅ」と唸る。
ゥゥゥゥゥゥ……
しかし相手は、僕達の話に付き合うつもりはなさそうだった。
四肢に力を込め、勢いよく飛び上がる。こちらに襲いかかってくるのかと思いきや、ヴァルツ号は壁に爪を食い込ませる、屋根に向かって登り出した。
「あぁ待て‼︎ ライカ君とアンジュのデビュー戦にもってこいの相手‼︎ 」
「初戦が肉塊ってかなりキツいんですが⁉︎ 」
先生の滅茶苦茶な静止を聞くこともなく、ヴァルツ号は姿を消した。
残された僕達は、満たされぬ思いで渋い顔をするしかなかった。
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