【1】虹色と犬

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「下がって‼︎ 」  ヴァルツ号に真っ先に襲いかかったのはペタルデスだった。  完全に回復していないにも関わらず、虹色の彼女は狂気的な笑みを浮かべながら攻撃を仕掛ける。狭い路地だ。ヴァルツ号にも逃げ場はなかった。  ウゥゥアアア‼︎  しかしヴァルツ号は避けるどころか、ペタルデスに頭突きを喰らわせた。  単純なぶつかり合いでは、体格に優れるヴァルツ号の方が有利だった。小さなペタルデスの体は吹き飛び、再び路地の汚れた壁に叩きつけられる。 「随分と無茶をするじゃないか。何かあったのかい? 」 「あいつ、ボクの狩り邪魔した‼︎ ツキ様にあげる人間だったのに‼︎ 」 「おいおい。聞き捨てならないことが聞こえたんだが……」  今の彼女はこちらの味方のようだ。  最もその過程で、人間を危機に追いやったことは許容できないが。 「なぁ虹色。今のあいつに銃弾は効かねぇんだな? 」 「ペータールーデースー‼︎ そうだと思うけど‼︎ 」  警部はペタルデスの返事に「そうか」と返すと、構えていた拳銃を下げた。 「ライカ。お前銀の弾丸持っていたよな」 「えぇ。今は使えませんけど……」  そこまで言って、僕はあることに気がついた。  この状況で銀の弾丸を使える「人間」が一人だけいることに。 「俺に寄越せ。ぶっ放してやらぁ」 「えー‼︎ 銀の弾丸で殺したら食べられないのにー⁉︎ 」 「肉塊化した奴なんか食うなよ……」  先生の指摘は的確だったが、ペタルデスは不満げに「むぅ」と唸る。  ゥゥゥゥゥゥ……  しかし相手は、僕達の話に付き合うつもりはなさそうだった。  四肢に力を込め、勢いよく飛び上がる。こちらに襲いかかってくるのかと思いきや、ヴァルツ号は壁に爪を食い込ませる、屋根に向かって登り出した。 「あぁ待て‼︎ ライカ君とアンジュのデビュー戦にもってこいの相手‼︎ 」 「初戦が肉塊ってかなりキツいんですが⁉︎ 」  先生の滅茶苦茶な静止を聞くこともなく、ヴァルツ号は姿を消した。  残された僕達は、満たされぬ思いで渋い顔をするしかなかった。
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